『サイバーエージェント子会社社長の告白』
【第13弾】
AWA 小野社長
「折り合いのつかないものを抱える」
〜大きなリングに立つために、目の前のリングに全力を出す〜
『サイバーエージェントのグループ会社の社長インタビュー連載企画:第13弾』
AWA株式会社 小野 哲太郎
<経歴>
2007年 サイバーエージェント入社 社長アシスタント。
2007年 アメーバ収益部門にて、広告商品開発やサービスプロデューサー。
2012年 サイバーエージェント・ベンチャーズにてVC事業。
2013年 藤田ファンド設立。
2014年 AWA株式会社設立。取締役に就任。
2018年 AWA株式会社 代表取締役社長に就任。
<企業情報>
AWA株式会社
<関連記事>
11月中に公開予定!
『サイバーエージェント流!経営のポイント』
【第13弾】AWA小野社長が考える ”サービスに対する親心”を育むことで「自走する組織を創る方法」とは?
「AWA」は月額定額制の音楽配信サービスです。
月々たったの960円で、世界中の5,000万曲以上を聴き放題でお楽しみいただけます。
エイベックスの代表取締役会長CEOの松浦さんとサイバーエージェントの代表取締役社長である藤田が発起人となって創った会社です。
定額制音楽サービスは、他にもたくさんありますが、
「AWA」の特徴は、ユーザーが作ったプレイリストを主役にして、新たな音楽と出会ってもらうという点で、ユーザー同士で音楽をオススメしあう場所になっています。
定額制音楽配信サービスのいいところはシンプルで、たった1000円足らずで数千万曲という膨大な音楽を自由に聴けるという点です。
しかし、ほとんどのユーザーは、目の前に数千万曲を置かれて、「はい、どうぞ!」と言われても、結局は、もともと好きなアーティストとか、好きな曲しか聴かないことが多い。それだと定額制音楽配信サービスの良さを味わい尽くせません。
普通にしていたら聴くはずのなかった音楽と「出会い」、「感動し」、「新たに好きになる」という体験を毎日毎日紡いでもらえて初めて、私達のサービスを最大限に楽しんでいただけると考えています。
特定のアーティストの曲を聴くだけであれば、CDを買ったり、従来型のサービスで曲をダウンロードすれば出来ることですからね。
ユーザーがつくったプレイリストを軸に、「新たな音楽との出会い」を提供しています。
他の定額制音楽配信サービスだと、運営側がオススメする音楽を届ける形が多いのですがAWAでは、ユーザーが作ったプレイリストを他のユーザーにオススメすることで音楽との出会いを演出しています。
元来、”プレイリスト”は、自分の好みで音楽をフォルダ分けしておくという極めてパーソナルなものでしたが、私たちは自分用に留めておくにはもったいない大きな価値がそこにあると考えており、公開してみんなで共有しましょうというチャレンジをしています。
プレイリストには選曲の他に、タイトルと説明、ムードを設定することができます。現在1000万以上のユーザーが作成したプレイリストがAWAの中にはあり、その中から最適であると推測したものを各ユーザーにお届けしています。
その推測には、いわゆる機械学習の技術を使っており、ユーザーひとりひとりへのオススメを炙り出しています。
ユーザーが感性で音楽をまとめるという”キュレーション”と、それを最適な人に届ける”リコメンドアルゴリズム”が二重になってユーザーに音楽との出会いを提供しています。
個人の深い感性・感覚など、自分ですら気付けていないような関心を炙り出して、その傾向をもとにその人が気に入るであろう音楽をオススメするということをAWAのリコメンドエンジンはやっています。
ユーザーの感性や感覚は普遍的なものではなく、その時どきの状況によって変動します。今何をしているのか、どんな気分か、その日の体調だって関わってくるかもしれません。そういった内的要因だけではなく、時間帯や天気など外的要因からも少なからず影響を受けるとも考えています。
それぞれの個人が、今どういった状態なのか?によって、気に入る音楽は変化していくということです。
その変化を察知し、最も良いオススメをするには、お気に入り、リピート、スキップ、再生した時間帯、聴いている期間など膨大なデータを扱いますので、これは手作業ではできないことで、機械学習(いわゆるAI)は音楽との出会いにおいて必要不可欠だと思っています。
一方、人工知能のようなテクノロジーが人と音楽の出会いをすべて完璧に演出してくれるとも思ってはいません。
音楽の好き嫌いは、ある種思い込みのような部分が一定部分を占めていると思っています。
音源を聴いただけでその好き嫌いを判断できるほど耳が良い人は少なく、「憧れの先輩が好きなアーティストだから」とか、「仲の良い友達や恋人にオススメされたから」とか、その音楽と出会って耳に入るまでのストーリーというか、コミュニケーションみたいな部分の影響を大きく受けていると考えています。
ある音楽を好きになる瞬間は、聴く前から”耳の態度”がポジティブになっている”というイメージです。
AWAの主役はユーザーが作るプレイリストです。
曲を選んで、順番をああでもないこうでもないと並び替え、タイトルと説明文をつける。より多くの人に届くように工夫する。一つのプレイリストを作るのに3時間という時間をかけているユーザーもいます。1日に10個ものプレイリストを作って公開しているユーザーもいます。
「まだ注目されていない音楽を自分は知っている」というような自己顕示的なものだったり、「絶対にいいから誰かにこの曲を聞いて感動してほしい」というような貢献心、「同じ好みを持っている人と関わりたい」というような”人の感情”がそこにあります。
結局は、音楽のようなエモーショナルなものを届けるには、テクノロジーだけではそれは不可能で、人の感性とか思いとの掛け合わせが重要だと思っています。