ニーズにフォーカスしたデザインを
株式会社エイアール / 菊池 美範
もはやどん底だったので、リスクは全く感じませんでしたね。これ以上悪くはならない状況だったので、何も怖いものはありませんでした。とにかく必死さが全てのモチベーションでしたね。
1つの雑誌の一部のページしか最初は任せて貰えなかったのですが、信頼を積み重ねていくと全てのページを任せて貰えるようになる。 そうするとクレジッ ト欄に載るので、そこから今度は大手の出版社さんから仕事が来る・・・目の前の仕事をひたすら一生懸命に取り組む事で、気付いたらそういう好循環ができて いました。
出版社さんをクライアントとして、雑誌や書籍をデザインするデザイン会社とご理解下さい。現在別の会社を起ち上げていて、こちらはデザインのビジネスの幅を広げるシンクタンク的な役割を担わせようと考えています。
90年代前半から他社に先駆けてコンピュータでデザインを行うようにしました。その時から雑誌の仕事以外に、衛星放送のチャンネルNECOのロゴや、いくつかの博物館や展示施設のデザインを担当したり、幅を広げました。
1995年からは雑誌や書籍のデザインにシフトしました。当時マックユーザーという雑誌があったのですが、その雑誌のデザインを担当していました。最先端のソフトウェアを用いて全体のレイアウトやデザインを担当しました。
にっかつ映像コミュニケーションさんからのお仕事で「チャンネルNECO」のロゴデザインが採用された時ですね。コンペだったのですが、競合は大手や実績 のある手強いライバル。対して僕らは二人しかいない超弱小のデザイン会社でした。だけど、そこで勝つ事ができたのです。凄く嬉しかった。
勝因のひとつとして、当時まだ一般的になっていなかったデザイン分野向きのコンピュータとソフトウェア(アップル社のマッキントッシュⅡとアドビ社のイ ラストレーター88)をいち早く導入したこともあるでしょう。「あれ、もうできたの?」とクライアントさんに言われた時は快感でしたね。(笑)
「これで勝てるだろう」くらいの準備だと絶対負けます。「100%勝てる」と思えるほど煮詰めて準備をしなければ勝てません。お客さんが幾つか条件を出してた中で、その条件をクリアーする事は当然で、やらなくて良いと言われている所まで全て作り込みます。
流れの中で頂いている仕事は大変ありがたい。ただ、雑誌とか定期刊行物は、あって当たり前だと思いがちなのですが、勿論契約期間に終わりは来ます。ある 日突然お客さんがいなくなった時、僕らは今置かれている状況を改めて認識して、さらに必死になるのです。どんな小さな仕事でも、お客さんの要求した以上の 提案を出さなければなりません。社長以下スタッフ全員が一丸となり、何としてでも勝つという気概を見せる。そして100点を遙かにオーバーテークする力量 を見せなければいけません。そうでもしなければ、ライバルには勝てません。
勿論最初から気付いていたわけではありません。お客さんがデザイン業とかクリエイティブの人に期待する事は、どれだけの発想の引き出しを持っているか?と いう単純な事実に気付いてからですね。後はビジネスバンクさんのオープンオフィスに入会して、色々な勉強をさせて頂いている事も大きいかもしれません (笑)