ニーズにフォーカスしたデザインを
株式会社エイアール / 菊池 美範
中小のデザインオフィスは経営基盤を安定させるのが難しい業種です。経営を考えた時に、デザインと言う分野でキチンとマネタイズして、長期的に事業として 継続していかなければなりません。デザイナーや出版業界の一部の方々は契約や金銭面に関してルーズな一面があります。創業して現在まで30年以上続いてい るデザインオフィスは、わずかなのではないでしょうか。
レストランと一緒で、シェフが美味しいと思う料理を出せば繁盛してお店がうまく経営できるとは限りません。お客様の満足が得られなければ成功しないのと同 じです。ニーズに沿ってなければダメなんです。たまにデザイナーの中でも「何で俺のこんなに素晴らしいデザインが受け入れられないんだ。世の中おかしいん じゃないか。」と言うデザイナーもいます。
しかし、その考えはひとりよがりで現実を直視していません。ごく一部の人にしか受け入れられるデザインでは、「内輪受け」「一部のファン受け」で終わっ てしまい、それはデザインビジネスとして成長が見込めないまま終わってしまいます。世の中の要請にマッチしたデザインを提案しなければ、大半の方にとって 価値がないということです。世の中から価値を認めて貰えなければ、デザイン依頼のリピートも途絶えてゆき、その結果、経営も成功することなく終わってしま います。
欧米の電子書籍の体系が世界標準として濁流のように流れ込んできましたが、日本においては電子デバイス中心の書籍や雑誌が主流になるのに、それなりの時間 がかかります。僕らのグループの新会社(エイアールディー)は電子書籍の雑誌のデザインやプランニングも手がけ始めましたが、まだ手探りの状態ですね。
勿論、ビジネスの枠組みは大きく変わると思いますが、読み手からすると、本や雑誌のカタチが電子であろうが紙であろうが、どちらも一長一短がありますよね。
電子の海に全ての情報を流し込むと仮定すると、それに伴って検索する対象が膨大になってしまいます。例えばあのページの隅に写っていたあの写真は何か? と調べる時に、検索が非常に複雑になります。状況によっては人間の曖昧な記憶をたどった方が早い場合もあるでしょう。つまり電子だからといって全てにおい て万能とはとても言えないですよね。どちらがどちらに吸収されてなくなる、というよりも、読書体験の絶対量が増えるのだと思います。
ヒントを与える存在になりたいですね。社員に考えさせる経営者です。社員を伸ばすコツは、アンサーを与えない事だとこれまでの経験で思いました。
以前は何でもかんでも自分でやりたがって、教えられる事は積極的に教えて回って、事業の成長が第一でした。ただ、もうそういう時期は終わりましたね。ヒ ントを呟く程度で良いので、次代に繋がるような育成をしたいです。自分がこの世を去った時に、あの人がこう言ってくれた考えるキッカケになった、と時に1 人でも思ってくれたら満足ですね。
そういう意味で、今は自分の事どうこう思うより、若い世代に対して何を与えられるかという事に興味が強いですね。
勿論最初から気付いていたわけではありません。お客さんがデザイン業とかクリエイティブの人に期待する事は、どれだけの発想の引き出しを持っているか?と いう単純な事実に気付いてからですね。後はビジネスバンクさんのオープンオフィスに入会して、色々な勉強をさせて頂いている事も大きいかもしれません (笑)
「これで勝てるだろう」くらいの準備だと絶対負けます。「100%勝てる」と思えるほど煮詰めて準備をしなければ勝てません。お客さんが幾つか条件を出してた中で、その条件をクリアーする事は当然で、やらなくて良いと言われている所まで全て作り込みます。
流れの中で頂いている仕事は大変ありがたい。ただ、雑誌とか定期刊行物は、あって当たり前だと思いがちなのですが、勿論契約期間に終わりは来ます。ある 日突然お客さんがいなくなった時、僕らは今置かれている状況を改めて認識して、さらに必死になるのです。どんな小さな仕事でも、お客さんの要求した以上の 提案を出さなければなりません。社長以下スタッフ全員が一丸となり、何としてでも勝つという気概を見せる。そして100点を遙かにオーバーテークする力量 を見せなければいけません。そうでもしなければ、ライバルには勝てません。 。