日本初民間月面探査プロジェクト「HAKUTO/ハクト」
株式会社ispace / 袴田武史
今は、大きく変わりつつあるフェイズですよ。それを、我々は宇宙ビジネスビッグバンと呼んでいます。アメリカ政府としても、民間宇宙開発を後押しする声明を出しています。起こりつつある宇宙ビジネスビッグバンの要因は大きく3つあると思います。
1つは、アメリカが市場を解放した点です。NASAが地球近郊の開発はしないと声明を出したんです。NASAもお金が無くなってきていますからね。地球近郊は民間に任せて、火星とかもっと遠くに力を入れて行く方針を取っています。
2つ目は宇宙開発コストの低下です。政府の作ったロケットの3分の1以下のコストで打ち上げられるロケットを民間が開発したんです。打ち上げコストは宇宙開発の半分くらいのコストを占めるので、そこが、安くなっているのは、大きいですよね。また、民生品を活用することで、コンピュータの性能が毎年良くなっているので、その分スペックも高くなりコストは低下します。
3つ目は、人材の多様化です。今まで宇宙産業にいなかったイーロン・マスクみたいな起業家がどんどんこの業界に参入し始めています。あとは、ベンチャーキャピタルもお金を出し始めたので、ある程度のビジネスモデルが見えてきて資金回収ができる見通しが立ってきているんですね。
これらの要因から、今までは数兆円していたものが、数十億で出来るようになったんです。
他社の例ですが、衛星でストックしたデータを企業に売ったりすることが考えられます。他には、温暖化で今、北極の航路ができ始めています。でも、氷山があって危ないので、安全に航海する為の、氷山の位置のデータを提供する商売もあります。北極の航路は今までのアフリカ大陸を通る航路よりもショートカットできるので、需要は高いと思います。
40名前後ですね。みんな、このプロジェクトに賛同してくれた方々です。年齢層は、中心は20~30歳くらいで、上は50過ぎから、下は大学生までいますよ。みんな仕事が終わった後に集まって活動しています。
基本的にはワイワイと活動していて、変な言い方すると、サークルみたいな雰囲気だと外から言われます。笑 宇宙開発というとワクワクしますよね。そういったワクワクする経験に携われることが、みんなのモチベーションになっていると思います。
Google Lunar XPRIZEという2015年末までに月面にロボットを送り込むレースに参加する為に、集まったんです。でも、このGoogle Lunar XPRIZEが終わってそのまま解散したらもったいないと思い、宇宙分野でビジネスしていける母体にする為に、ispaceという会社を創ったんです。
そうですね。ただ、レースをしているだけでは、会社としてやっていけないので、宇宙探査ロボットを事業化したり、宇宙エンターテイメントとして、楽しませるような映像を提供したりしようと考えています。あとは、我々が作っているロボット技術は宇宙以外にも使えるので、地球でのロボット事業というのも視野に入れています。
1つは、技術の高さですね。はやぶさの開発にも携わっていた、吉田教授が開発責任者として就いていただいている点です。彼の技術を組み合わせて、日本人の得意なコンパクトなものにまとめています。
2つ目は、エンジニアだけでなく、いろんな専門分野を持った人が集まっている点ですね。技術はもちろん必要なんですけど、技術者だけでなく、組織を支える人材も揃っていて、お金の為でなく、みんながワクワクできる好奇心を持って参加しています。これは、次の働き方の、一つのモデルケースになるのではないでしょうか?
3つ目は、我々はプロセスをオープンにしています。国の開発は情報規制して隠しがちですよね。でも、我々は多くの人に応援してもらいたいので、情報開示しながら、楽しみながら巻き込める展開を考えています。
普通の人の宇宙に対する考え方が、すごく特殊なものだと思われがちなんです。特殊だと思うと、リスキーなことや不可能なことだと捉われてしまう。でも、実はそんなことないんです。その印象を変えることが、難しいですね。その印象を持たれると、なかなか支援も受けづらくなってしまいますから。
今は、かなりボランティア的な組織なので、もっと効率的な組織にマネジメントすることが課題ですね。