気持ちとブレない魂
株式会社さんばん / 柴田 紀之
私は当時、ディレクターというよりは営業をして番組を取ってくるプロデューサーを目指していましたので、アシスタントプロデューサーとしてプロデューサー と一緒に仕事をしていました。その会社では上が詰まっていてなかなか自由にできなかった事もあり、 師匠の勧めでフリーとして番組の演出をする事にしたのです。 しかし、2000年頃から、コンプライアンスの問題で、テレビ局がフリーの人と直接契約をしてくれなくなりました。なので、フリーの人は関連会社を経由 して仕事をするか、自分で会社を作って仕事をするしかなくなってしまいました。関連会社を経由することで仲介料を取られるのが嫌だというフリーの人が集 まって会社を立ち上げたのが今の会社の始まりですね。
最初はマンションの一室を借りて、フリーの仲間でお金を出し合い自由に仕事をし、余ったお金で飲み会を開くという大学のサークルのようなノリの会社を作り ました。 そうして、一人一人の仕事が増えて来たときに、会社でADを雇うことにしたんです。 今まではフリーの人たちが集まってできた会社だったので、社会保険も何も気にする必要はなかったのですが、人を雇うとなると相応の費用がかかるので会社の 運営のためにお金が必要になりました。その時に、お金を出したくない人達は会社を辞めていき、残って会社を大きくしていこうという想いを持った人が残っ て、今の会社を原型になりました。
テレビ番組制作が事業の大部分を占めます。他には博物館などでボタンを押すと流れるような展示映像の制作をしています。全てが映像に関わる仕事ですね。
テレビ放送が始まって半世紀以上が経ちますが、この半世紀、世界や社会が変わるキッカケは全てテレビの映像からなのです。テレビで流れる映像は、社会を変える力を持っていると思います。 例えば、日本とアメリカの衛星中継で最初に流れた映像は大統領暗殺です。これはまさに世界が変わった瞬間です。他にも、天安門事件で戦車の前に立つ学生や、小渕首相が「平成」と掲げたのも、選挙の汚職もどれもこれもテレビの映像です。 事件事故にしてもそうです。日航機墜落の悲惨な現場を伝えたのも、湾岸戦争を伝えたのも全てテレビです。テレビから流れる映像を通して世の中が変わってきました。 テレビにはそういう力があると思います。
良いこととしては、普通では行けない場所に行けること、普通では会えない人に会えることですね。たとえば、ノーベル賞を受賞された方、マリナーズのイチ ロー選手、他にも普段では知り合うこともないだろうという方に取材だと会うことができるのです。 また、希望をすれば、南極や内戦地に取材として赴くことができます。海外にも仕事で行くことができます。そういった経験ができることは大変いいですよ ね。 辛いこととしては、休みが取れないことですね。休めないこと自体が嫌なのではなく、同窓会などに呼ばれなくなることが辛いです。行く約束をしたとして も、上司について仕事をしている頃は自分の都合で帰ることはできませんし、今になっても制作に関する悩みがあると簡単に帰ることはできません。そうして、 会に遅れて行ったり、ドタキャンを繰り返していると最初から呼ばれなくなってしまいます。