時代の変革期におけるビジネスチャンスとは?
株式会社ALMACREATIONS 代表取締役社長 / 神田昌典part1
【1ページ目続き】
日本は、次の食いぶちを見いださないといけない、つまり新しい産業を生んでいかなければなりません。
この本にも書いてあるように、企業の多くは、コンプライアンスやコーポレートガバナンスというような状況の中、ほとんど動けなくなっています。このことを考えると、後10年以内に国全体として新しい産業を生んでいく必要があります。
そして、産業を生む事になるのは、今の学生さんたちの世代です。 20代の方々は、そういう状況を踏まえた上で、医療、介護、健康産業、環境、ロボット、エネルギーという分野で産業を作っていくしかないわけです。
起業するにあたって、このような事業分野というのは、経験を積んでおかなければどうしようもありません。
そうすると、起業に関して言えば、手っ取り早く目の前の金をつかむのかというのは、皆さんの年代が考えなくてはいけないことのひとつなんです。
お金ではない時代が、あと3年でスタートするかもしれないわけです。その時に、目の前のお金に走るという価値観は、残念ながら僕みたいな40代の価値観で、皆さんの価値観ではないはずです。
そういうことを考えると、これから社会的な経験を積まなくてはいけない20代は、30代40代を参考にするのではなく、自分たちで身の回りの問題について何ができるかということをいろいろな人達と話し合いながら、具体的に実践することで経験を積む必要があるのです。
僕のビジョンというものは、正直言ってないんです。
僕自身に「世の中こうあるべきだ」というビジョンはないし、自分が世の中を変えるなんてことは思っていません。実際問題、個人がビジョンを持ったからと言って世の中変わるわけじゃないと思います。
例えばどういうことかと言うと、サーファーに大きな波を変えることが出来るのかということと同じです。波に乗ることは出来ても波の進む方向を変えることは出来ないじゃないですか。
世の中は勝手に変わります。では個人が出来ること事は何かというと、その、変わるプロセスの中で、波に溺れない人をどれだけ作れるかという話でしかないわけです。
それでは、これからどんな波が来るのか。 僕の認識の中では、2018年頃には現金に頼らないで暮らす人が10%を超えます。その後は急速に、「現金を使う方がマイノリティ」となる時代に入るでしょう。 つまり、今までずっと続いてきた資本主義自体が、急速に崩れ始めるだろうということですよね。
更に、皆さんが30代40代になる時、すなわち2030年には、中国、インド、東南アジアが相当発展していますね。そのような状況の中では、日本というのはアジアの中で生きるのが必然的になってきます。
それから少なくとも東アジア圏に関しては言語のバリアは全くなし、配送のバリアも全くなし、EUのようにパスポートすらも必要なくなってくるという可能性は十分にあります。もしかしたら、通貨の単位も、ユーロのようにひとつになっているかもしれません。
そういった過程の中で、現金に頼る生活だけをしていれば、年収300万どころではなく年収100万円の域にまで当然入っていくわけです。なぜならば、競争の世界に生きている限り、これからずっと中国の12億人、更にインドの人達と、競争し続けなければならないのですから。
これはビジョンと言うよりも、ドラッカーが言うように、現在起こりつつある事をそのまま延長すればそのようになるのです。
その過程では相当な痛みが訪れます。
そういった痛みのところに、実を言うと、ビジネスチャンスがいっぱいあるんですよ。 それは例えば、江戸幕府が倒れて明治維新になったころであったり、第二次大戦が終わってから、昭和の高度成長期に入るまでのように、社会変動が起こる時というのは、その変化の橋渡しをするためのビジネスチャンスが無制限にあるわけです。
では、それが金銭活動のためのビジネスチャンスだったかというと、そうではなく、先ほど述べたような、困っている人達を救済していくための活動が、ビジネスだったんです。1980年代まで、事業というのは、今で言う「社会起業」が当たり前だったわけです。
ですから結論から言うと、個人のビジョンというよりも、もうすでに世の中が新しい方向に動き始めているので、それに対して、いかに社会的な痛みを少なくしていくかが我々の仕事なのです。
このような時代には40代50代という過去の時代で成功してきた人の話を聞いても意味がありません。
僕は、感性的に20代の方が進んでると見ています。更に言えば20代より10代の方が進んでいる。
それは教育の現場を見ていてもわかります。
10代の人達の認識能力の高さというのは、もう人種が違うと言ってもいいほど違います。携帯世代やコンピューターゲーム世代の子とは、脳の構造が違うんですよ。
医療関係のシュミレーションであったり、今まで大人がそのスキルを学ぶのに20年かかったことを、コンピューター世代、ゲーム世代の人達はおそらく3週間でやってのけるでしょう。それぐらいの進化が起こり始めているわけです。
それに対して、本来、僕らのような大人がやるべきことは、彼らが進んでいこうとする道に邪魔にならないこと(笑)。
そして、彼らが進む方向の羅針盤として、「そっちへ行けば、失敗の繰り返しだぞ。君たちの能力を持ってすれば、こっちに行きなさい。後のことは僕らにはわからん。」と。 あとは、旧来のシステムをできる限り早く変えていくことです。
例えば教育であっても、現在は工業主義に基づいた教育ですから、画一的な教育が行われています。今の子供達には息苦しくてしょうがないわけです。
なぜなら、新しい能力を持って生まれてきているのに、その能力を発揮しないように、必死に小さな箱に閉じ込めようとしてるのですから。
とは言え、変えてくれと言ったところで、システムというのは一朝一夕に変わるものではありません。ですから現状では、その小さな箱の中に押しとどめられない子達でコミュニティを作り、そしてその子達の可能性が分かっている教師達と連携を組み、その中で人を育てていくしかないんです。