本を読まない人はお気の毒ですね
上智大学名誉教授 / 渡部昇一 株式会社T.E.G(トウキョウ・アンサンブル・ギルド) / 渡部玄一
昇一氏 私はリーダーについての著書もありますので、日本のリーダー、世界のリーダーを調べ、考えますが、やはり「リーダーになる人の資格」というものが2つあるんです。
1つが「先見の明」です。これからどうなるんだ、という見通しが無ければリーダーにはなれません。
2つ目は「ついていく人が得すること」です。例えば豊臣秀吉。彼の子分で大名にならなかった者はいません。この2つがあれば大リーダーになれます。
そして、搾取するような「俺が一番」というリーダーは長続きしません。
私の見てきた限り、大企業の部長とか役員が独立すると99%失敗します。それはなぜかというと、その企業の力で部下の人がついてきているからなんですね。その人自身の魅力じゃなかった。
長続きしている中小企業の社長は、いずれも義理堅く、よく学ぶ。彼らには「あなただからついていく」という人たちがいます。その人自身に魅力があります。そのような魅力は「修養」に心がけているから身につくものです。
玄一氏 僕の場合は、毎回音楽家を束ねなければいけません。そういう時に心がけているのは、僕が一番働くということです。そうしないと最初はついてきてくれません。
代表取締役という肩書きが偉いと勘違いせず、誰よりもよく働くと、みんなもよくやってくれます。音楽の世界でも演奏の技術と志の高さが無ければ、人がついてきません。
昇一氏 それは中小企業のリーダー達は痛切に感じています。真面目な人はね。
今、「致知」という雑誌がじわじわと伸びてきています。あれは「いかにして人間修養するか」ということなんです。だから「致知」が集会を開くと言えば、某一流ホテルの一番大きい部屋に千人が集まります。例え参加費が一万円以上であろうがです。たいていは小さな会社の人達です。
それだけ自分を高めたいという人がいるのです。
玄一氏 「Culture」という単語は「耕す」という意味がありますね。一方で「文化」という訳がありますが、あれは違和感があります。文化というのは中国の周りの野蛮な国が中国化することを言いますから。
「耕す」という話で、僕たち音楽家は基礎の練習を毎日行います。これは土に水をやっているようなものです。芽が出るかどうかはわかりません。すぐに変化は見られませんから。でもしばらくすると芽が出てきて、それからも水をやり続けるとある時、実がなったり花が咲く。「Culture」とはそういうものだと思います。
同じように勉強にせよ何にせよ、続けることが大事なのではないでしょうか。
昇一氏 私がマーフィーの本を発表したのは、イギリスに留学していた時です。イギリスに行く前はドイツにいたのですが、当時は西ドイツ、東ドイツと分かれていて、ベルリンの壁も出来ていないころでした。
その頃の西ドイツは急成長中。町も活気に溢れ、栄えていました。それに対して東ドイツは廃墟も同然です。なぜこれほどの差ができてしまったのかと疑問でした。