本を読まない人はお気の毒ですね
上智大学名誉教授 / 渡部昇一 株式会社T.E.G(トウキョウ・アンサンブル・ギルド) / 渡部玄一
その謎が解けたのがイギリスでジョセフ・マーフィーの本を見つけた時でした。その差は自由主義と共産主義の違いにあると気付きました。人それぞれ好き勝手な希望を抱き、それに向かう事が出来る社会と、そうした夢が描けない社会の差を知ったのです。
その後イギリスから帰国すると、日本は左翼思想に偏り社会主義を「善」とする雰囲気になっていました。このままでは日本から夢が消えてしまうと思い、翻訳しようと決めました。
昇一氏 心静かに、自分が本当になりたい人間像を持ち、願うことです。やりたいことや、欲しいものであっても構いません。
例えば私は子供の頃、おばあさんが生まれた家に行くと、池がありそこに魚が泳いでいたんです。それで池がある家が欲しいと思い、実現しました。それから高校が終わった頃、恩師の家に行き、生まれて初めて本物の書斎を見ました。こういうおじいさんになりたいと思い、今は本に囲まれた生活をしています。
「あのようにありたい」というイメージをふくらませ、強く願うことです。
エントロピーの法則というものがあります。エントロピーは「ならす」ということ。エントロピーが増大すると「全てのものは死に向かう」んです。
例えば温かいコーヒーも時間が経つにつれて冷めていきます。これはエントロピーが増大しているということです。草が枯れて土になるのもそうです。
社会でも「ならす」という風潮があります。「ならす」というのはどうしても下にあわせること。すると優れた人はつぶれていきます。自信を持って飛び抜けないといけない。終戦直後はそうでした。だから活力がありました。
学校でも同様でしょう。出来の悪い者が出来る者に合わせることは出来ません。でも反対なら可能です。すると出来る者がならされて出来ない者と同じになってしまう。だからこれはある種のエントロピーの増大です。
昇一氏 読書というのは面白いからやるからね。どういうメリットがあるか考える前に読みなさい。そのうち一生手放せないような書籍に出会いますよ。
昇一氏 まあ読まない人はお気の毒ですね(笑)
なぜかというと人間と動物の違いだからです。違いは様々あるけれど、最も大きな違いは「人間は時間と空間を超越できる」という点です。これには読書が一番手っ取り早い。空間を超えて地球の裏側の本も読むことが出来ますし、昔の本を読めば時間を超えることが出来ます。
人間が人間らしさを発揮出来る重要なものの1つが本なのです。
玄一氏 僕も本が大好きなところは受け継いだと思いますね。歩いてて本屋があったら必ず入ってしまうし、読んでない本が数百冊あるのに買ってしまいます。
なぜ読むかというと楽しいからなんです。ただ、僕はもう「これだ!」という本に出会ったことがあるんです。つまりこの本に出会って人生が変わったというもの。
そういう本に出会った時って、胸が熱くなって家に閉じこもっていられなくなって辺りをほっつき回りながら興奮するぐらいの感動や、このままではいけないという想いがあるわけです。すると「またそういう本に出会えるのではないか」という期待がありますね。
昇一氏 「内発的な関心に基づいてコツコツと努力を続けると確率では説明出来ない幸運が訪れる」ということです。これを信じることが出来るかどうかはその人の素質です。
玄一氏 日本という国は世界的に見てすごくいい国です。そこで仕事をしていくことが出来るというのは喜ばしいことだと知って下さい。そして同時に、恵まれていて、活躍出来る環境があると信じて夢に向かっていってください。