「書」と「IT」 の融合
書道家 / 武田双雲
1975年熊本生まれ。 母である書家・武田双葉(そうよう)に3歳から書を学ぶ。
東京理科大学卒業後、NTTに就職。約3年後に書道家として独立。
NHK大河ドラマ「天地人」や世界遺産「平泉」
世界一のスパコン「京」など数々の題字を手掛ける。
独自の世界観で、全国で個展を開催。
作品集「たのしか」「絆」など著書は20を超える。
書道教室には250名以上の門下生が通う(2005年新規募集締切)
公式サイト:http://www.souun.net/
感謝69:http://kansha69.com/
仕事を楽しもうじゃない会:http://www.souun.net/shigoto-happy.html
学生時代は遊んでばっかりいたんです。夢も希望もなく、かといって絶望もありませんでした。周りと同じレールに乗っている危機感を持ちながらも、そのままでいたんですね。逆に、今の若者は脳がちゃんと焦っていて、危機感も持っています。今の学生は自分で力をつけないといけないという意識が強いと思うのですが、昔は中途半端にレールが残っていて、なんとなく大丈夫という雰囲気があったんです。大学に行って、就職すれば大丈夫という流れですね。 そのような時代の中で企業に入ったのですが、これが思ったよりも楽しかったんです。入って直ぐは「働かないといけないのか」という嫌な気持もありました。でも、最初の一年間でITの世界にとても感動したんです。そして、今まで興味がなかった「社会」に対して興味を持ち始めたんです。
同期の中ではかなり楽しんでいたと思います。 そして、今まで漫画しか読んでいなかった自分が、ビジネス書にはまりだしたんです。時々、本に夢中になり過ぎて電車の終電に乗り遅れたりしたこともありました。本を読む中で、同世代でビジネスを頑張られている方にも興味が湧いてきたんです。その一方で、趣味で書道を続けていました。そして、会社の中で私が書が上手いということが評判になったんです。それでみんなから色々な依頼をされるようになったんですね。自分が必要とされている事が単純に嬉しかったので、無償で続けていました。
実家に帰った時に、今までずっと見ていた母親の書に対して「かっこいいな!」という感情を抱いたんです。まさに素晴らしい歌手に惚れたような感覚で、ビビっときたんです。そして会社に戻った後、先輩から名刺をつくって欲しいと尋ねられたんです。筆で書いた名刺を見せたら、想像以上に褒めてくれたんですよ。あんなに喜んでくれるとは思わず、何より私自身が感動しました。そして、先輩が「これ、飯食えるんじゃない?」という言葉を発したんです。その時に、ぶあぁーと頭に入ってきて、電撃が走り、その場で会社を辞めることを決断しました。それまではITコンサルタントをして会社に務めていたのですが、あの出来事以降、寝るのを惜しんで退社後にホームページを夢中でつくっていました。それからというもの、周りにある様々な文字が目に飛び込んできて、感覚が変わっていったんです。
今思えば繋がりますよね。今の時代にあるインターネットの流れと、書道というものが組み合わさったら素敵なものができるんじゃないかと感じていました。最初は路上から始め、私の文字を受け取ったお客さんの感想などをHPに載せていました。その後、雑誌のライターさんが来てくださり、記事を見たラジオの人が来てくださったりと、意外に早い段階でメディアが来てくれました。ネタがただの書道としてではなく、「書」と「IT」 の融合みたいな感じで取り上げてくださっていたんです。この組み合わせは、新しいものだったんですね。