グローバルを目指す行動力と発想力
アキュセラ・インク 会長・社長兼CEO 医師、医学博士 / 窪田良
理由は大きく3つあります。
1. 私は以前ワシントン大学で助教授をしていました。そこでの研究成果をもとに起業するといういわゆる大学発ベンチャーとして、お膝元で行う方がやりやすいと思ったからです。地元だったからこそ、起業した最初の1年は、大学の産学連携の理事の許しを得て、大学に勤めながらベンチャー起業を兼任することができました。その期間があまりに短かったり兼任が許可されなかったりしていたら起業に踏み切れていなかったかもしれません。また、兼任の期間が一年以上長許されていたら大学も起業もどちらも中途半端になってしまったかもしれません。結果的に一年という期限が私にとっては大変ありがたいものになりました。
2. アメリカは人材の流動性が高く優秀な人材を確保しやすいということ。よく言われることに、ビジネススクールの学生のトップの3分の1は自ら起業し、その次の3分の1はそういった起業家とともに起業する、残りの3分の1が大企業やコンサルに入ると言われています。我々のようなベンチャー企業に優秀な人が就職することも珍しいことではありません。また、アメリカにいる人々にはより一層の熱意を感じることがあります。シリコンバレーで起業している半数以上の人が非米国人であると言われており、彼らはアメリカに留まるために価値を生み出さなくてはなりません。そのプレッシャーがハングリー精神の源なのでしょう。
3. 最後に、アメリカは医薬品の世界最大の市場であるとともに、グローバル展開しやすいということ。医薬品の開発は一剤につき平均一千億から数千億円のコストかかると言われおり、それだけ投資をしないとものが出てこないということは、その投資を上回る市場、すなわちグローバルな市場を目指してビジネスを行う必要があるのです。
日本だけでもそれなりの市場はありますから、海外でまとまった時間を過ごしたことがないとグローバル展開という発想になりにくいのかもしれません。国内のためにやること、グローバルにやること、どちらも重要で、それぞれの価値の好みに合わせてビジネスをすることが大切です。私は幼い頃の経験があってたから、グローバルを目指すということに執着したのでしょう。
言語の障壁です。また文化に根ざした価値判断の違いを持つ人々をどう束ねていくかということはこれからも続く一番のチャレンジです。
将来なにがあっても適応できるよう、好奇心を持って色々なことに広くアンテナをはっておくことが重要です。たくさんのものを試してみないと本当に自分が好きなことは分かりません。その中でなにか究極的に好きなものを見つけることができたらそれを深く掘っていけばいいと思います。本当に自分に合うものを知ることに時間を費やして欲しいです。
また、海外に行くことをオススメします。その際、日本人として日本の歴史や文化といった難しいことだけでなく、現在の食文化、アニメや音楽などのポップカルチャーの知識を持っておくと、他国の人とのコミュニケーションをより有意義なものにできるので、尚良いと思います。
私は研究室で研究するだけでなく、オーケストラやテニスなど、色々なことを大学時代に精を出してやっていました。海外旅行や様々なアルバイトもしていました。面白そうな人がいたら話を聞きに会いに行くことにも積極的でした。人からは生き急いでいると言われるほど寸暇を惜しんで様々なことをしていました。
企業に訪問した際、ポジティブなエネルギーを感じられるかどうかだと思います。感覚的なものですが、社員が生き生きとやる気を持ってやっていると感じられることが大切です。もし、そのようなチームに入ることができたなら、それは大きな財産となるだけでなく、成功するチームのあり方やコミュニケーションの取り方を学ぶことができ、将来自分が独立してなにかを始める際にも大変役に立つと思います。