グローバルを目指す行動力と発想力
アキュセラ・インク 会長・社長兼CEO 医師、医学博士 / 窪田良
慶應義塾大学医学部卒。医学博士 。
研究過程で緑内障原因遺伝子であるミオシリンを発見、「須田賞」を受賞。
眼科専門医として緑内障や白内障などの執刀経験を持つ。
その後、2000年に渡米。ワシントン大学で助教授として勤務。
2001年に独自の細胞培養技術を発見する。
2002年4月にシアトルの自宅地下室でアキュセラ・インクを設立した。
現在「飲み薬による失明の治療」を目指し、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、スターガート病、緑内障など様々な眼科治療薬を開発している。
2013年にはウォールストリートジャーナルが「世界を変える日本人」と紹介。
著書に『極めるひとほどあきっぽい』(日経BP社刊)がある。
米国眼科学会(AAO)、視覚眼科研究協会(ARVO)、日本眼科学会、慶應医学会、在日米商工会議所、一般社団法人 日米協会の会員。
ワシントン州日米協会理事。Japan Institute of Global Health (JIGH)のアドバイザー。G1 ベンチャーのアドバイザリー・ボード。
我々は、飲み薬による失明疾患の治療を目指し、その創薬を行っているベンチャー企業です。米国や欧州の病院で患者さんに新薬候補を2年間飲んでいただき、その効果・安全性を調べる臨床試験フェーズ2b/3を行っています。飲み薬で目を治すという前例のないことを行うにあたり、新薬候補となる化合物をゼロから作り出す過程を2年間で達成することは不可能だと言われていましたが、我々はそれを2年間で成し遂げることができたので、現在の臨床開発段階に進むことができています。
我々はまだ会社の規模が小さく、様々な分野の人間が同フロアの狭い空間で意見を言い合える環境にあります。これが迅速な意思決定や新発想の誕生を可能にしたのでしょう。また、ベンチャー企業は投資家からの資金をもとに開発を行っているため、その宿命として短期間で成果を出さなければなりません。プロジェクト成功の可否が会社存続の可否に直接リンクすることが相当なプレッシャーになり、イノベーションを引き起こすのに役立っているのかもしれません。
私は幼い頃から目が好きだったため眼科医になったのですが、そこで失明する患者さんを目の当たりにし、なにかできないかと思ったことが創業のきっかけです。
子供の頃アメリカに住んでいたとき、日本はアメリカの真似ばかりしていると言われ違和感を感じていました。日本には既存のものを改良する誇るべき能力がありますが、それだけではなくゼロから価値を生み出す事もできるということを発信していきたいと思いました。それを実現するには自ら起業することであり、世界に大きなインパクトを与えたい思ったことが起業を選択した理由です。
点眼薬は眼の表面の病気にしか効果がありません。注射によって目の奥にまで薬剤を行き届かせることができるけれど、その治療を受けるには相当な技術レベルを持つ眼科医にかからねばなりません。目に注射することは誰しも恐怖心を持つうえに、毎月のように定期的に投与しなければならない場合が多いため、一回の注射でも眼内出血、網膜剥離などの失明に直結する副作用が起こる可能性があります。そのスキルを持つ医師が不足しがちな発展途上国のような場所でもセルフメディケーションを可能にし、眼球注射によって引き起こされる失明に至る可能性のある副作用を防ぐ為にも、飲み薬の開発に取り組んでいます。