今ワクワクすることから自分のキャパシティを広げる
Love’s Gallery / 藤原愛
気づいたことは2つあります。1つ目はフェアトレードのあり方について。当時は、「生産者から直接買い付けているからフェアです」という風にしていたのですが、結局、その生産者がどこで材料を得たかなどの全体図は見えていない状態でした。その問題に気づかされたのは、とあるネパールの団体で活動されている方がお店に遊びに来られた時のことです。彼女は私の商品を手にとって、「この商品を作っている人達は、フェアトレードだと言うと、外国人が喜んで買うのを知っていて、それを利用して売っている。私たちのような外国人と繋がりがある人はそのコミュニティの中では上位層で、もっと搾取されている人はそのコミュニティの中にいる」と言いました。それを聞いてハッとしましたね。結局、私が考えていた、「生産国で直接買い付ける=フェアトレード」という考えは、ただの自己満足だったのだと気づいたんです。その時に、自分で原材料から生産、流通、販売まで全て把握することが大事なのだと思うようになりました。
2つ目は、支援のあり方についてです。東日本大震災の後、「私に出来ることをやろう」と思いました。お店のお客様と融資を集い、支援チームを組んで被災地へ行きました。しかし、自分一人でお店をやっているので、支援を行っている間はお店は機能せず、体力や金銭的にも自分自身が持ちませんでした。そのときに、「自己犠牲でボランティアをするというのは、続かない。これも、自分の自己満足でしかないんだ」と気づきました。経済として、ちゃんと成り立つ、流通できる経路を作らないとダメなのだと思い、お店を経営することの限界を感じました。
自分のやりたいことを追求する上で、お店経営に限界を感じていた時に、知り合いからインドネシアでの仕事の話を頂きました。それは、日本食レストランのフランチャイズの展開の仕事の通訳という役でした。インドネシアで、自分のやりたいことを見つけられるかもしれないと感じたので、その仕事を手伝いました。結局、そのビジネスは上手くいかなかったのですが、現地に長く住んでいる日本人と知り合いになりました。
私は元々アトピー体質で現地の乾期に困り果てていることをブログで投稿したところ、その日本人の方から、カポポサン島で伝統的に作られているココナッツオイルをお土産で頂きました。それを使った時に、感動したのを覚えています。乾燥がなくなり、付け心地も素敵でした。「これは日本で商売になるよ」とその方に冗談言っていたら、その方が「ぜひ、そうして欲しい」と乗り出してきました。
その背景にはカポポサン島の経済的に苦しい現状がありました。孤立した島で、収入源として漁が盛んなのですが、海の環境を顧みず、ダイナマイト漁や毒を使って漁が行われていて島の人たちも、自分たちの土地の環境を壊したくはないものの、生活のために選択がない状態でした。 その話を聞き、「自分ができることがあるかもしれない」とその日本人の方に島の人を紹介して頂き、島へ行ってみました。
そこはヤシの木だらけで、ココナッツは完全に無農薬。整備された農園で誰かが働かされている状態ではありません。ココナッツオイルのファンとして、それを売れる自信はありましたし、原材料から販売まで全ての流れを把握することができたので、「これが私のやりたいことだ」と思いました。どんどんと自分のしたいことが見つかっていく。この時のいろいろな巡り合わせは、縁としか言いようがありませんでした。
まず、島の人たちのココナッツオイルの作り方を見て、衛生的に改善すべき部分と、ココナッツを破るために機械を入れる必要があることを把握しました。それから、どのぐらいのココナッツオイルを私が買い取れば、無理な漁をしなくて、経済的に自立できるのか考えて、出した数字、一ヶ月100kgというのを決めました。
基本的にフェアトレードというのは、生産者に前払いしないといけません。私の場合はココナッツそのものを現地で売られている値段より高く買い、ココナッツをオイルにする労働に対してのお金を支払っています。私自身も経営者として自立した生活ができるような利益が出るよう、価格の設定をしました。
私の仕事としては、商品の瓶詰め、パッケージのデザイン、販売先への送付を行っています。私自身はお店を持っていませんが、卸し先は日本全国にあります。最初は顔見知りのお店に商品を置いてもらっていましたが、今は口コミなどで卸し先も増えました。