未来に急がず、過去にとらわれず、常識に縛られず。今を思いっきり!
株式会社ドウゾ / 棚田信子
社会的に評価されるような、目に見えた成功のようなものへの妄想ってあるのではないでしょうか。私も「何か成し遂げなくちゃ」とか"大きなこと“をやらなければいけないような気がして、何もできていない自分に焦って苦しい時期がありましたが、そうではないと最近思えるようになりました。目の前のできることを、ひとつひとつ行なっていくことでいいと思うんです。例えば、今まで挨拶したことがなかった人に気持ちよく挨拶してみるとか。そういう小さいと思えることでも、大事に動いていくことの積み重ねが、少しずつ何かに繋がっていくということを最近実感しています。
そもそも、やることに大きい、小さいと定義付けしているのも自分の概念でしかないんですよね(笑)
これも沖縄で生活するうちに気がついたことです。特に、近所に住んでいたオバァから教わった視点は、私にとっての財産になっています。
ある時、畑でオバァがこんな話をしてくれました。 オバァはいつも畑を荒らしにくるカラスと格闘していたのですが、その畑の中にある立派なパパイアの木を指して、「こんな立派なパパイアの木がどうしてここにあるのか分かる?」と私に聞きました。そして「これはカラスの置き土産だよ」と教えてくれました。最初私は意味がわからなかったのですが、畑を荒らしにきたカラスが糞をしていって、その糞の中に混ざっていたパパイアの種が芽を出して育ったのだと教えてくれました。
おばぁのこの視点はすごいと思うんですよ。畑を荒らしていく目の前の憎きカラスと、大自然の中で役割をもって生きるカラス、二つの全く異なる視点でカラスを見ているんです。ミクロとマクロの視点の両方を持ち備えているオバァに、ものすごく感動しました。オバァは、地球レベルのダイナミックな視点で、たくさんのことを私に教えてくれました。社会的に評価されるような成功者でもない、小さなオバァですが、大きいなぁ…と思えたんです。
そうですね。沖縄は私にとって価値観を「リセット」できた場所だったと思います。
でも沖縄から東京に戻ってその価値観でもって会社を設立したのですが、簡単にはいきませんでした。というのも、初めての社長業で、立派な社長にならなければいけないと思ってしまい、世間的に成功している社長像を思い描きながら、必死になって色々な情報や知識を入れていったんです。ところが、情報を集めて鎧を固めれば固めるほどに、苦しくなってく自分がいました。カタチばかりの理想像に近づこうとして、情報や知識を外から入れれば入れるほど、自分が沖縄で確信を持てていたはずの「本質」から遠ざかっていくような気がしたんです。
もちろん学ぶ事はとても大切な事です。しかし、その時の私は「ちゃんとした社長に見られないといけない」という「恐れ」からくる情報収集だったんです。だから本質が見えなくなったり、自分の糧にできなかったのだと思います。何か新しいサービスを作りたい時には、ワクワクしながら必要な情報を仕入れていきます。でも自分が立派な社長に見られる為の情報収集は、無意味なものでした。ワクワクがもとにある情報収集は、何も考えないでも勝手に体が動いて、さらに本質に近づいていくんです。そして、たとえ周りから壁にぶつかってるように思われても、自分ではそれを「壁」だとも思っていないんです。同じ情報収集でも、その行動の原点って、ものすごく大切だと思います。