エチオピアのひととせを感じてほしい
株式会社anduamet / 鮫島弘子
私自身、自覚していないのですが、弊社の映像を担当してくださっている カメラマンさんから、エチオピアにいるときと日本にいるときで顔が違うと いわれたことがあります。エチオピアにいるときのほうがキリッとしている そうです。やはり現地にいるときは、自分に全責任があるので、常に緊張感 を感じているのかもしれません。
まだまだ小さな規模の小さな会社ですから、andu ametのおかげでエチオ ピアのGDPが10から100になったとかそういうインパクトはもちろんないで す。でもうちの工房で働いてくれている職人さんの生活や意識は大きく変わったと思います。 それと、今andu ametで製造しているバッグたちは、エチオピア製のものとし ては、すでに間違いなくナンバーワンの品質だと思います。こういうものが エチオピアでも作れると証明できたということも、エチオピアの今後の産業発展に大きく影響を及ぼしていくのではないかなと考えています。
エチオピアはまだまだ産業の発展が遅れている国。だからせっかくいい革 がとれるのに、材料の革の状態の輸出に依存しています。一方、革製のバ ッグというとイタリアやフランスが有名ですが、あんなに小さな国でそんな にたくさんの家畜を保有しているはずがありません。こういう国ではエチオピアのような国から革を安く輸入して自国で生産し、付加価値をつけていま す。本当はいい革の産地はエチオピアなのに…もったいない。それならエチオピアでイタリアやフランスにひけをとらないような最終製品をエチオピアでつくろう、と思いました。ただ、デザインや技術が高いというだけではつ まらない。そうではなくて、エチオピアという国の美しさや、作っている職人の笑顔も伝わるようなブランドにしたい。そう思っています。
andu ametは企画、素材調達、製造、販売とすべてのプロセスで社会や環境 に配慮することを目指しています。でも、いくらフェアトレードで作ってい ても品質が低ければただ、新しいゴミを生み出しているのと同じこと。だか ら、本当にお客様から愛されるいいものを作らないといけません。当たりま えだけど、これは簡単ではありません。大変だけど、だからこそやりがいが あります。
エチオピア語で「ひととせ」、1年という意味です。ひととせ、ひととせ違 う表情が出て、長い期間楽しんでいただけるレザーという素材を使っていること。エチオピアの美しいひととせを通じて育まれた動物たちの革を使って いること。 そして、生産者と消費者とデザイナーさんが、andu ametというブランドを 通して、ひととせお互いを知り、友情を深め尊敬しあって欲しい。そんな思いをこめてなづけました。