ポジティブ思考で困難を乗り切る
株式会社ディスコ 代表取締役社長 / 夏井 丈俊
そうですね。起業はゼロからですが、立て直しはスタートがマイナスなのでその分大変でした。元から根付いた習慣や文化を一掃して、新規の考え方を定着させるのはそう簡単ではありませんよ。
最初に依頼されたニューヨークにある現地法人ディスコインターナショナルの立て直しをお話しますね。当時のニューヨークの状況は、赤字で今にも潰れそうだったのにも関わらず、好立地な場所にオフィスを構えていました。他にも飛行機はファーストクラスで、ホテルは高級と経費の無駄遣いが目立っていました。だから、まずは会社に必要なお金を全部洗い出して、不必要な部分は削りました。次に「企業理念」を作りました。何故なら、会社が危機的状況なのにも関わらず、危機感を抱いている社員が少なかったからです。これはまずいなと思い、社員の目標を統一させるために「企業理念」を作りました。この効果は非常に大きかったです。理念が社内に浸透するとたちまち会社全体が熱を帯びて、「みんなで一丸となって会社を立て直すんだ!」という気迫が生まれました。企業理念ができたおかげで、社員の「自分が働く目的」が明確化されたのだと思います。社長となった今でも、「企業理念」は、一番重視していますね。
自分がメディアとなって社内へ発信していくように心がけました。自分が何をしたいのかという目的、それに対する熱量。このメッセージを社員へ絶え間なく発信していきました。これはリーダーの重要な資質だと思うんですよ。単に業務管理能力が高いだけでは、周りがついてこないので、「自分をメディア化して周囲へ発信する」。これさえ意識すれば、理念はすぐに浸透していくと思います。
奇しくも、僕は事業立て直しの度にトラブルに巻き込まれていました。ニューヨークを任されていた頃も、ちょうど世界を騒がせた9.11事件が起こりました。当時、就活イベントのボストンキャリアフォーラムの開催時期も間近に迫っていて、「これはもうだめかな」と諦めそうになりました。でも、そんな困難な時でも、社員が「せっかくですから、学生のためにもイベントを開催しましょうよ。」と声を掛けてくれたものですから、例年通りイベントを開催することを決意しました。その後も、社員が一丸となって、企業と学生を一生懸命集めてくれたおかげで、当日は6000名の学生を集客し、大成功のうちに幕を閉じました。