現役東大院生でバイオベンチャー起業 –事業と研究のシナジーを生み出す−
株式会社ジーンクエスト 代表取締役 / 高橋祥子
これをやればいい、という共通している考え方はほとんどありません。先輩経営者のアドバイスやその方の理念や哲学というのは、その人の状況経験によって形成されているものなので、人によって言うことが大きく異なるのは当たり前です。共通な考え方や絶対的な正解ってないので、たくさんの方からたくさんの意見を聞いた上で、自分はどれを選択するのか考えました。
それぞれの課題に対して、自分のパターンに似ている状況下にあった人の意見を参考にしました。正解がないので、状況が異なれば、行動も考え方も変わると思うんですよね。アドバイスいただいた方と自分の状況は何が違って、どこが共通しているのかを冷静に分析して、自分なりの答えを出すようにしています。
一つ目は、当然かもしれないですが「自分の体調管理」をすることです。私自身、昔からがんばり過ぎてしまう性格なので、今年過労で倒れてしまったことがあるんです。社員にすごく心配をかけてしまって、こんなことではいけない、長期戦なんだから持続可能な働き方を取り入れないと、と思い直しました。ベンチャーは寝ずに働くのが当然みたいな風潮がありますが、そういう風潮よくないし意味ないと思うんですよね。本当にみんなが寝ずに働かないといけない会社は経営者がいけてないと思いますし、それより持続可能な形の中で、最大限のパフォーマンスを発揮できるように頭を使った方がいいです。私もしばらくは真に受けてしまって体を壊してから初めて気づいたことなのですが、放っておくと働き過ぎてしまうので睡眠と食事だけは何があっても摂るように意識して心がけています。
二つ目は、ベタですが「人との繋がり」を大切にすることです。もともと私は、小さい頃から挙動不審で人見知りが激しくて、人付き合いがすごく苦手な人なんです。できれば仕事はチームでやるより一人だけでストイックに進めたいタイプです。ただ、起業してから数えきれないくらいいろんな方にお会いして、その後も様々な場面でいろんな方に助けていただいて、影響を及ぼし合って、一人では絶対できないような事業を創っていると、人間って素晴らしいなぁ生きててよかったなぁって思うんです。これも恥ずかしながら起業してから初めて身を持って発見したことでした。個人事業をやってるわけじゃないんだから、事業を創るのも人の繋がりが本当に大事で、大切にしたいなと思っています。
選択肢を増やすことが大事だと思います、食わず嫌いになっていることが多いと思うので。最初は、自分が少しでも興味のあることに手を出して、そこからどんどん広げれば良いと思います。
選択肢の数が多いと、選ぶときに迷うかもしれませんね。でも選択肢については、どれを選べば正解、不正解とかないので、直感しかないと思います。ただ私だったら、楽な道は飽きやすい性格なので、一番難しい道を選択しますね。簡単に乗り越えられない方が、刺激があってやめられなさそうなので。
長期インターンとプログラミングです。私は社会人の経験がないまま起業して苦労したので、学生の頃から少なくともインターンで会社とは何なのかの経験を少しでも積んでおけばよかったです。もしベンチャー企業で経験を積んでおけば、もっと早く起業できたかもしれませんし。あとプログラミングは、バイオでも他の分野でも、手段として使われるのは避けられないじゃないですか。今さらながら、学生の頃はプログラミング技術を習得する良いチャンスだったなと。是非皆さんには、学生の内からこの二つをおすすめします。
学生起業家は良いと思いますが、莫大な資金を使うのではなく、自己資金で始められる範囲で起業するべきと思います。私のようにならないように(笑)。それに学生から大規模な起業をスタートしていきなり大きな失敗すると立ち直れなくなる可能性もあります。絶対に何かで挫折するので、学生の頃は大きな失敗ではなく、小さな失敗をたくさん積み重ねた方がいいと思っています。
私がお伝えできることはあまりありませんが、結局生きて死ぬだけなのでほとんどのことは大した問題じゃないです。迷わずに自分がしたいことをするといいと思います。