波動制御を軸に、イノベーションを連続的に孵卵する
ピクシーダストテクノロジーズ株式会社 / 代表取締役社長COO 村上泰一郎
私自身の『人生を通じて、日本における研究開発のROI(投資利益率)を上げたい』という想いからです。実際に、コンサルタントをしていた時代も、研究所発の技術など新技術を事業化する案件を好んで担当していました。日本の研究開発のROIを上げるためにできることを、初めはコンサルティングの形でやっていましたが、『別の形でも何かできないか』と漠然と思っていました。
そんなときに、もともと知り合いだった落合(会長CEO)から『一緒に事業をやってくれないか』と誘いを受けました。日本のアカデミアに対して危機感を覚えていた彼は、研究開発の成果を社会に届けることで、その価値の対価としてお金をいただき、それを再び研究開発に注ぎ込むことの重要性を説いていました。
そして、私も『アカデミアレベルの最先端の技術が、もっと価値ある形で世の中に出ないといけないのではないか』と感じており、 解決したい課題が一致したので、一緒に会社を設立するに至りました。
ほぼ全方位的に活きました。コンサルティング時代は、新規事業はもちろん業務システム系の案件なども担当することが多かったので、 一通り会社の業務というものを理解したうえで、ビジネスマンとしての基礎的なスキルセットを身につけることができました。
コンサル出身の人は「ONEMAN ARMY(一人だけの軍隊)」のようなもので、会社のことをほぼすべて1人でやろうと思えばできるケースが多いと思うのですが、逆に全領域でエキスパートには勝てません。とはいえ、人員が少ないが故、機能ごとに1人入れることが難しいような、組織だっていない段階のベンチャーにおいては、コンサル出身者のスキルセットがすごく活きると思います。
オープンイノベーションを組み立てる「ディール力・営業力」です。これだけ小さな会社が、名だたる大手企業とアライアンスを多く組めているのは、このチカラがあったからこそじゃないかと思います。こうしたBtoBのスキルは、やはり一朝一夕に身につくものではないので、コンサル時代に培われた、育ててもらったものだと思います。
また、過去の取引の場で生まれた”1日にしてならず”の「ネットワーク」も非常に活きています。未だに10年前のお客さんと会って、『またなにか一緒にやりたいですね』という話から、『こんな技術でなにか困り事を解決できないですかね』と発展することもあります。
ガンマ波サウンドケアスピーカー『kikippa」のエピソードがあります。今となってはよく売れている製品なのですが、大手製薬会社と手を組んだ初期は、お互いの考え方の違いですごく苦労しました。
当然製薬会社は、より慎重な事業の組み立て方を採用しています。しかし、今回我々が作りたかったのは、ヘルスケア商材であって薬ではなかったのと、より早く社会に価値提供するために、早く世の中に届けたいというモチベーションでした。この考え方の違いで衝突してしまいました。
これをどう解消したのかというと、ざっくり2つあって、ひとつは、パートナーの役員クラスと「腹を割って話す」ということです。腹の探り合いをしている時間が惜しかったので、オープンかつフェアにやるスタンスを作り上げました。
もうひとつが、企業ごとに物事の進め方が違うことを受け容れて、『社会価値をマキシマイズする』であったり、『これによって誰々を助ける、楽しませる』といった「目標・旗印を共通化する」ということです。我々の目的を達成するために、最適なやり方は何なのかを模索したこと、それができる関係性を作っていただけたことがポイントでした。
その結果、共同開発で『kikippa』を製品化・販売まで持ってくることができました。