抹茶の「和」で世界を健康に
株式会社WorldMaccha / 代表取締役社長 兼 CEO
一言でいえば“ハードウェアの壁”です。最初は『エンジニアが要る』ことすらわかっていなかったんですよね(笑)。プロダクトデザイナーの友人に助けられ、メカのエンジニアを探し、ガレージで試作を重ねるところから始まりました。どうやって茶葉を何ミクロンまで挽くのか、どうやって泡を細かくきれいに点てるのか、そして毎日使う人が面倒に感じない清掃性をどう担保するのか。試作品が一つできても、量産はまったく別の山です。味を左右する細部の詰めが必要で、意思疎通もシビアになる。そこで“日本語で味のニュアンスを語り合える国内のOEMパートナー”を探し当て、ようやく量産の目処が立ちました。
でもちょうどそのタイミングでパンデミックが襲い、当初のBtoB(オフィス導入)計画が白紙に。ここでD2Cへ一気に舵を切りました。クラウドファンディングの映像制作を、離れた場所からZoomでディレクションするような泥臭い対応もしました。結果的にローンチ直後、ありがたいことに大きなメディアにも評価いただき、初期の着火に繋がっていきました。資金調達は9割方断られます。でも、続ける意思があれば、一本ずつつながっていく。そんな現実でした。
アメリカには“加工されすぎていない食品を選ぶ”という強い価値観を持つ層がいます。常温流通・長期保存を前提とするペットボトルでは、どうしても香りや緑の発色といった“フレッシュさ”を守り切れない。京都で初めて『挽きたて抹茶』を飲んだときの衝撃――あの香りと色を、家庭で、毎日、手間なく再現できたら絶対に受け入れられる。カフェ『Stonemill Matcha』で体験設計を学び、家庭導入のハードルも思い知った。その経験が、“その場で挽き、その場で点てる”抹茶マシンという解へ直結しました。
いくつかの要因が同時にかみ合いました。まずはプロダクトの“佇まい”です。円窓を思わせるデザインが、置くだけで空間に小さな禅の“間”をつくる。コロナ禍で家時間に投資するムードの中、その体験価値は大きかった。D2Cで早く手に取ってくださった方々が、ソーシャルで自然に薦めてくださり、ホリデーギフトの需要も重なって、輪が広がっていく。さらに大手メディアのアワードにも選んでいただき、信頼の“初速”がついた。もちろん、発売後の継続は別の勝負ですが、初期の着火はデザイン・タイミング・クチコミの三拍子が揃ったのだと思います。