障害(バリア)を価値(バリュー)に変える
株式会社ミライロ 代表取締役社長 垣内俊哉
<経歴>
株式会社ミライロ 代表取締役社長 垣内俊哉
骨形成不全症という難病のため、幼少期から車いすで生活を送る。現在は、障害のある社員らとともに、ユニバーサルデザインのソリューション提供や、ユニバーサルマナー検定、デジタル障害者手帳「ミライロID」を運営する。1989年愛知生まれ。2010年立命館大学在学中に、株式会社ミライロを設立。
詳しい会社の紹介はこちら。
私たちは、社会には「環境・意識・情報」という3つのバリアがあると考え、それらを解消するために、さまざまな事業を行っています。具体的には、「環境」は、施設や設備のバリアフリーの監修をするなど、使いやすいプロダクトを生み出すこと。「意識」はユニバーサルマナー検定をとおして、障害者や高齢者に対する向き合い方や接し方を皆さんにお伝えすること。そして「情報」は情報保障。聴覚障害や言語障害のある方に対するコミュニケーション手段の確立や、デジタル障害者手帳「ミライロID」の開発・運営などがそれにあたります。
特に「ミライロID」は、当社が障害者と企業の結節点になる上で果たす役割が大きいと思います。最初は接点のあった6社に導入いただき、そこからは地道に「こういった取り組みを始めました。障害のある方々にとっては気軽に外出できるようになるものですし、事業者の窓口の皆さんにとっても負担感を減らせるものです」とコツコツ伝えていった結果、幅広い企業や自治体に広がり、今では、導入事業者数は3,800を超えています。
その中で、障害者の割引制度などはなかった企業にまでミライロIDの導入が広まったのは私たちの当初の想定を上回るもので、最初に描いていたところとは違う景色まで到達したなと感じています。
高校を中退した頃、障害ということに対してのネガティブな考えを何か新しい形に昇華できないかという中で、義肢装具士や車いすメーカー等々の職を色々考えていました。ですがそれらの職場がバリアフリーではないことを知り、違う道を探索して大学進学をしました。
在学中、ウェブページの制作を行う会社でのアルバイトで営業を任されたとき、車いすに乗っているからこそお客様に覚えてもらえて、結果に繋がったということがありました。その経験から、「バリア(障害)をバリュー(価値)に」という着想を得て、障害があるからこそできることをしていこうと、20歳の時に起業しました。
血気盛んだったからというのもありますが、僕個人だけの話で言えば、就職すると言っても、いわゆる障害者雇用枠みたいな形になることは火を見るより明らかでした。いま障害者雇用の形で活躍されている障害のある方はたくさんいますが、当時はまだ少なく、そこにあまり活路を見出せなかったです。
かつ、大学1年生の時から2社で仕事はさせてもらっていたので、 そこで完璧ではないものの、知識やビジネスマナーを得られたというのも大きかった気がします。
あとは、 例えば当社がやっているようなことを、30歳ないしは40歳でやるのと、20代で始めるのとでは、応援してくれる人の数が違うなっていうのもありますね。当時そんなことを計算できていたわけではないですが、「20代の若い学生たちが頑張っている」と支援してくださった人、企業も多かったので、もしそれが3、40歳だったら、「それぐらい自分でやれよ」と捉えられていたかもしれないと思うので、早く起業してよかったなと感じています。