経営者、起業家という選択
株式会社角田識之事務所 臥龍/角田識之
「今回インタビューさせていただいたのは臥龍先生こと角田識之さん。
他人と会話出来ないほど心が弱かったと語る臥龍先生(詳しくはHP)ですが、
「志授業」「感動経営」など本質を見据えた志溢れるプロジェクトを展開されています。」
最近、力を入れているボランティア活動は「志授業」の普及です。これは、小中学生時代から志高く、人生の羅針盤、自分のキャリアプランを考えることができる力を養う授業のことです。
特に、小学生の柔らかく素直な土壌に、深く「志の種」が入ると、将来、必ず芽が出てきます。中学、高校、大学と年齢が上がるにつれて、土壌が段々と硬くなっていきます。「どうせ無理だ」と考えるようになっていきます。
それは子供たちが悪いのではありません。先生とか親とか周りの大人たちが、夢とか志を壊す意識のウィルスを与えているのです。「そんなの無理だよ」「それじゃ食べていけないよ」と言ってね。
マイナス思考のウィルスが入った状態で生まれてくる人はいません。それどころか人間は、素晴らしい笑顔と素直さと向上心を持って生まれてきています。それは赤ちゃんを見れば、一目瞭然です。それを削っていくのではなく、育てていく授業をしています。
30歳で独立し、今までの25年間のテーマは「オーナー経営者の第二創業支援」で、一貫しています。竹は節の数だけ伸びていき、節の数だけ強風に強いと言われます。同じように会社の歴史にも節目を作る、つまり第二創業という形で、もう一度ベンチャー精神を持つお手伝いをするということです。
私の本の中で「2:8の新ルール」というのがあります。千葉のメーカーの「第二創業の物語」を実録で紹介しています。相談を受けたとき、来年に創業100周年迎えるのですが、実は、銀行から廃業勧告を受けているとおっしゃるのです。その方は四代目で、過去三代が一生懸命やってきたのに、自分の代で火を消すのは嫌だということで、第二創業のお手伝いをしました。二年目には経常利益が億を超え、今では超優良企業にV字回復しました。銀行側は「あの時つぶさなくてよかった」なんて言っています(笑)。
私のソウルメイトの経営者さんで本名幹司さんという方がいます。東北のお土産として有名な薄皮饅頭を作っている柏屋さんの代表の方です。ここの家訓が「不易流行、代々初代」です。
「不易」とは変えてはいけないもの、「流行」とは思い切って変えるもののことです。企業がつぶれるのは、「変えるべきものを変えない」か「変えちゃいけないものを変える」からです。だから私も節目を作る中で、その会社の変えてはいけないものと変えるべきものを明確にします。
「代々初代」を支えるルールとは、自分の代でこれ以上の経営ピンチはないと思われるときに、躊躇なくトップ交代をし、その後は一切口を挟まないというものです。
今の四代目である本名さんも、ピンチの時に先代から任されました。工場を新築したばかりのころに、大雨がふって堤防が崩壊し、工場と商品が泥だらけになってしまったそうです。お盆前で仕入れ在庫も一番多いときです。本名さんは、従業員と涙ながらに泥水をかき出したそうです。ちまたのうわさでは、さすがの柏屋もつぶれるかもしれないと言われたときです。そんなときに、本名さんは社長室に呼ばれます。そこにはお父さんと専務、常務の叔父さん二人がいて、来週からお前が社長だと言われます。そのとき本名さんは、「この人達は僕に借金を押し付けて逃げるのか」と思ったそうです(笑)。ちなみに本名さんは交代後、無我夢中で立て直し、その年の決算は過去数年来の最高益になったそうです。これが「代々創業者精神に立ち返る」というものです。
しかし、このような交代はなかなか出来ないことです。なぜなら、人間は拍手されながら舞台を去りたいものです。「さすがに先代社長は素晴らしかったですね」と言われながら去りたいのです。ところがこの柏屋さんでは、ピンチの時に躊躇なくやります。誰も拍手されながら去る社長さんがいないのです。そのかわり受け継いだ者が必死でやるので、みんなが創業者になるのです。柏屋さんはこの「不易流行、代々初代」の2つの経営理念を守ることによって、東北土産ではナンバーワンの企業になり、これからも永続していくだろうと思います。
「私は初代じゃないから、受け継いだことしかできない」なんて思うのではなく、あなたにしかできない「創業者精神」が必ずあるのだと覚えておいてください。意志あれば、いつでもベンチャー企業に成れるのです。