抹茶の「和」で世界を健康に
株式会社WorldMaccha / 代表取締役社長 兼 CEO
World Matcha株式会社(ブランド:CUZEN MATCHA/空禅抹茶)2019年に立ち上がった会社で抹茶マシンと抹茶リーフを通して世界に抹茶の魅力を発信しているスタートアップです。本社は日本(東京・目黒)とアメリカ(カリフォルニア州サンマテオ)の2拠点を構えています。現在、主軸となっているのは、自社開発の抹茶マシン『CUZEN MATCHA(空禅抹茶)』と、マシンに適した100%オーガニックの抹茶リーフ(国産)の提供です。
創業者の塚田は1998年サントリーに入社。ジュース・茶など新商品開発を担当し、スタンフォード大学留学を経て米国のお茶事業に従事。2010年代半ば、アメリカで高まる抹茶需要に確信を得て社内ベンチャーを立ち上げるも、事業の継続性が断たれ独立を決意。カフェ「Stonemill Matcha」運営を経て、“挽きたて抹茶を家庭に”という構想をハードウェア×リーフで具現化。2020年にはCUZEN MATCHAがTIME “Best Inventions”に選出され、以降はD2CとB2Bの二輪で展開。
『日本の抹茶』を、日本人がきちんと文脈と本質で届けられていないのではないか――そう感じたからです。サントリー時代にスタンフォードで学ぶ機会を得て、2004〜06年に米国の生活にどっぷり浸かりました。日本ではすでに無糖のお茶が日常飲料になっていたのに、アメリカではコーラやジュースが当たり前。飲料の“当たり前”は国によってこうも違うのか、と。逆に言えば、文化と習慣を丁寧に変えていければ、お茶の居場所は必ず生まれる。そう確信したんです。そんな中2014年頃、アメリカの若い世代を中心に抹茶が静かに波をつくり始めていました。面白かったのは、語り手が必ずしも日本人ではなかったこと。社内ベンチャーで一度挑戦しましたが、会社の事情が変わりました。そこで『やるなら自分でやるしかない』と腹を決めました。
結果的に“お茶”に収斂していった、というのが正直なところです。若い頃は炭酸や果汁飲料の企画で駆け回り、やがて会社として“核”であるお茶を任されるようになった。気づけば20年近く、お茶と向き合っていた。その結果お茶が好きになっていたんだと思いますね。
日本茶には“丸さ”があります。紅茶や中国茶が香りで強く自己主張するのに対して、日本茶は素材の旨味や渋みで静かに語る。飲むと肩の力が抜け、人が輪になって会話が生まれる。私はその“丸さ”に日本文化の本質を見ています。
ペットボトルは、熱殺菌・常温流通・長期保存という産業の合理性に最適化された仕組みです。けれど“挽きたての香りと色”はその枠組みでは守りにくいんです。粉の抹茶も、開封後の酸化やダマ、保管劣化の問題が付きまとうんですよね。あと、向こうの常識でハイプロセスフードが主流なんですよね。その常識の中で、やっぱりそのお茶本来の色だったりとか香りっていうものを楽しんでいくためには、“挽く”と“点てる”を、家庭で誰でも簡単にできるマシンに落とし込む必要があったんです。
重い石臼の口当たりをできるだけ再現しつつ小型化するために、最終的にはセラミックミルを採用しました。平均6ミクロン台まで微粉化でき、口当たりが一気に滑らかになる。泡立ては茶筅の動きを参考にしながら、カップ側にウィスクを持たせることで清掃性と日常性を両立しましたんです。さらに茶筒をマシンに一体化し、カプセル個包装に頼らないことでプラスチックごみを最小化する――利便と環境の両立は譲れないテーマでした。