ソーシャルメディアは何を変えたのか
ジャーナリスト / メディアアクティビスト / 津田大介
そうですね。
僕は人と会うのが仕事なので。 ただ、誰かれ構わず会っていたら時間が足りません。
ソーシャルメディアを通してお互いやり取りをしていると、「この人面白いな」というのが分かるので、そこを分かった上で会うことによって効率がすごく良くなりますよね。
自分にない考え方を持っていたりだとか、逆に、自分の言っていることを深いレベルまで理解してくれているような人ですね。 学生の方も色々な人と会うべきだと思いますが、会いたい人にただ会って、話を聞くだけでは恐らく2回目は会ってもらえません。 やはり誰かと会ったときは話をして、生意気かと考えるかもしれないけれども、自分の拙い「意見」を言うことが大事です。
それが相手にとって「最近の若者はそんなこと考えているんだ」という気づきがあれば、それはすごく価値があることです。
発信することで「何をしたいのか」を意識できることじゃないですか。
自分がそれをやることで、自分がどうしたいのか、どうなりたいのかを考えること自体が僕は大事だと思っています。
そのアクションに多くの人を巻き込むのだったら、ただ自分がこうしたいんですというだけでは人は集まらない。人は集めるためには、言い方ややり方を考えて試行錯誤してみることに価値があります。
一番ダメなのは、発信そのものが目的化してしまうことです。発信することで自分は何がしたいのかを自問自答できることが大事。
また、ソーシャルメディアの良いところは、「効果測定」が出来るところです。
ある発言をして、どういう反応が帰ってきたか、どれくらいRTされたのか等が目に見えて分かりますよね。
それを繰り返していく中で、効果的な情報発信の仕方みたいなものを実地で学んでいくことが出来るのです。
実は、ソーシャルメディアは、「動員の革命」以外にももう一つ革命を起こしています。
それは、「試行錯誤の革命」です。
例えば、かつては、労力と膨大な時間を必要としたことが、今だったら同じようなことが1日とか半日で出来てしまうわけです。今までだったら1ヶ月の内に10個しかトライが出来なかったものが、100回トライができるようなった。99回エラーが起きるけど、でもたまに成功する。その反復が非常に早く出来るようになったのが「動員」という要素と共に起こした革命だと思います。
だから、学生の方には、有り余るほど時間がある今の時期に、有り余るほど試行錯誤のプロセスを経験すると自分の価値を高められると思います。
就職活動にしても、自分がどれだけ試行錯誤しているのか、成功体験、失敗体験を持っているのかをしっかりと分析して、他人に対して客観的に語れるようになればどんなところでも就職できるんじゃないかな。
やはり受動的で待っているだけでは無理な話です。
自分でそういうものが生み出せない、思いつかない、飛び出すことが出来ないという人は、面白そうな人をフォローしておいて、その人が飛び出した時に真っ先についていく。2番目のフォロワーになることが大事です。その戦略も考えておいて良いと思います。
まず、大学卒業後、就職活動に失敗しているところからスタートしています。 出版会社全部落ちて、自分でやっていこうと思い99年に自分で会社作ってからは、ジャーナリストや企業の取締役、ビジネス、大学での講義等、僕は色々なことをやってきました。
それらを全部やっているのは、自分なりのリスクヘッジでもあります。しかし今の自分は、昔から積み上げてきた自分なりの試行錯誤の結果なんです。今言った、中心となる柱以外にも色々なことに挑戦し、たくさんの失敗を経験してきました。その中でも、伸びしろがあるもの、やることに意味があるものが結果的に今こうして残っているわけですね。
昔、新規の雑誌の仕事をしていた時に、自分の専門領域外の全く不案内な記事を書いてくれという仕事の依頼もよくありました。
今なら、ある程度はググれば分かりますが、Googleもあまりなかったような時期に、そういう依頼があったらすごく大変でしたが、でもそういう仕事も全てやるようにしていました。
新しい新規の仕事は絶対に断らないというルールを自分で決めていたので。最初はすごく大変です。けれども自分でなんとかしようとする過程の中で一番自分が成長するんですね。それも試行錯誤の一種です。そういう意味で、常に試行錯誤出来るように新しいチャレンジを常にやることができる環境を整備することが大事です。
そうですね。
そういう意味では、僕が作っているメールマガジンが良い例です。メールマガジンでやるというのがまず試行錯誤の一種だし、メルマガの中でも、コンテンツに変化を持たせ、どのタイミングで話題に出すのかを考えるのは、まさに試行錯誤の連続です。
多分、僕のようなフリーの人間には共通な考え方だと思いますが、「走り続けないと死ぬ」んですね。
常に前のめりの姿勢で仕事に取り組むことが染みこんでいます。守りに入って、飽きられたら終わりなので。
だから僕はある意味では、もし明日Twitterがなくなっても、ある意味困らないような体制は用意しています。何か一つのものに安住をしてしまうことは非常に危険です。もし、絶対的な価値を自分が生み出しているのであれば、その部分をひたすら深堀りしていけば良いのだけれども、僕の場合は、世の中の動きがどんどん早くなっている中で、ある種のギャンブルとしてその動きの最先端で勝負することで何とか生き残れてるんだと。そういう意味では、新しいことを常に追求していかなければならないと思っていますね。
そう。そういう環境に自分を追い込める環境づくりがインターネットによってやりやすくなったと思いますよ。
昔だったら、カネやコネがないと出来なかったことが、今はカネの面でいうと、絶対的なコストもすごく安くなりました。
例えば、昔だったら「NPO立ち上げたい」と思ったら、人、場所、お金等色々必要でした。しかし、今や全部Facebookグループを使えば、別にNPOにしなくても似たようなことが出来るわけです。
コネに関しても、今は面白いことやっていれば、自ずと人はついてきてくれます。そういう環境をソーシャルメディアが作ってくれたことが、試行錯誤の革命を僕は後押ししていると思いますね。