起業はドラマ、果たすべき役割は無数にある
株式会社ブルームコンセプト 代表取締役 / 小山龍介
正直、難しいと思います。まず会社に入り、組織の中での動きを体系的に学んだ後に起業したほうが成功する可能性は高いと思います。学生のうちに起業すると、正直失敗する確率は高い。でも失敗する経験の価値というのはすごく大きいんです。失敗できる期間というのは実は学生の頃なんです。学生のときは失敗しても、まあ大したことはない。社会人になって失敗したら相当厳しいですからね。いろんなことを失います。しかも、時間的にもなかなか取れない。 学生のときには失敗できるという意味で、非常に問題なくできるんじゃないかな、と。だから学生起業は失敗前提でやってみたらいいと思う。でもそれはドラマの本当の最初で、イベントとして、最終的に30代後半でこういう事業を成功させているドラマのなかの一部、というような位置づけ。それくらいに割り切りでやっていくといいんじゃないか、と思います。
しますよ。エンジェル投資。ほぼ失敗することが前提です。100万円くらいあれば、学生は当分アルバイトしなくて済みますよね。アルバイトする代わりに事業に専念してくれるとこちらも嬉しいです。そうして益々成長していくに連れて、投資する金額も大きくなり、億単位の投資を受けるベンチャー企業が誕生するわけです。学生が100万円くらいのお金を支援してもらうことはそんなに難しいことではないと思います。100万円や200万円くらいの金額で出資してくれるようなところは今増えていますからね。そこはノウハウもちゃんと伝えてくれますから、そういったベンチャーキャピタルの最初のアーリーステージで投資してくれるところの門をたたく、ということはありだと思います。
基本的に事業は、困っている人の問題を解決するということです。つまり、痛みや嫌なことを減らすサービスか、もしくは嬉しいことを増やすサービスの両方か、どちらかです。さらに、共感力が大切です。困っている人やユーザーに共感する力がないと自分がやりたいことだけしか考えられない。細かいところでユーザーが嫌だなと思っていることに気づけるかどうかというのも大事なことです。
コーチングを学んだことが大きいと思います。コーチングは共感することができない。相手の気持ちになり、リフレクションを繰り返すことで共感する力が磨かれます。怒っている人がいると、なぜこの人は怒っているのかと分析しがちですが、それでは共感を拒んでしまいます。 細部に拘るという話がありましたが、あれはどちらかというと分析的で、クリティカルシンキング。批判しながら見ていくことが多いんですね。細部への拘りと共感力というものは相反するものですから両方を持ちあわせることは非常に難しいです。一部の起業家は、この共感力と西部への拘りを他の人が担っている場合があります。リーダーが共感力を持ってヴィジョンを描き、その参謀となる人はクリティカルに物事を見る。
資生堂さんの【一瞬と一生】という言葉。新しいアイデアやコンセプトというのは一瞬一瞬の出来事です。何か準備をして作り上げるのではなく、瞬間的に浮かぶものです。サービスも同じで、お客様と接して即興で作るんです。そうした即興力を磨くことで、良いサービスができ、良いコンセプトが生まれると思っています。 一生というのは、芦田宏直先生がおっしゃっているストックのことです。いかに自分の中に多くのストックを積むことができるか。ストックが浅いと一瞬のサービスも浅くなってしまいます。一瞬一瞬の中で瞬発的なものを作ろうとしたら、蓄積が必要になってくるのです。そしてその蓄積は一生をかけて築くものです。今のビジネス書や自己啓発書は一瞬でもなければ一生でもありません。つまり、こうなればこうなるという短い因果関係で説明されているもので、マニュアル化されたものなのです。型に嵌りすぎていて一瞬の即興もできない、そして、結局浅はかなもので終わってしまうのです。
1つはストックですね。生きてきた時間が短いので仕方のないことなのでそれをことさらダメだという気はありませんが。ストックを見直すこと、増やすことを意識し、増やしていって欲しいと思います。1995年のインタビューでスティーブジョブズはこのように言っています。 『ロケットを最初に打ち上げるときに方向を少し変えるだけで後々大きく変わってくる』と。そしてインタビュアーが正しい方向に向けるには何が必要ですか?と聞くと、ふだん即答する彼がしばらく考えて『センスだ』と答えました。実はこれはストックの概念で、今までの蓄積が正しい方向に導くということを意味しているのです。
たとえば僕は、広告代理店にいたとき、仕事で著作権について調べたことがあります。調べ続けていくと、グーテンベルクの活版印刷の話まで遡り、著作権に関してよく理解することが出来ました。その後は著作権に近い法律を調べてその歴史まで理解して……の繰り返しです。歴史の中で位置づけることで、ストックが積み重なると思います。
そうです。あらゆる分野で歴史は必要となってきます。今自分が学んでいる分野、興味のある分野の歴史を学ぶことから始めてみるといいかと思います。
焦らないことです。起業するタイミングは学生でも30代でも40代でも50代でもいつでもあります。これはスポーツと違うところですね。スポーツは年齢的に限界がありますが、ベンチャーはその時々でいろいろなビジネスに関われます。20代なら自分をプログラムする、30代なら経営をする、40代ならメンター的に関わる、50代なら出資というように、 自分がどのような役割を果たしていくか、適正を図りながら考えていけばよいと思います。焦らずに、そしてストックを増やすことを意識しつつ勉強するといいと思います。