ビジネスは現代版の戦(いくさ)である
ティーコネクション・ホールディングス / 冨田 賢
社長になってみないとわからない辛さというものがたくさんありましたし、 思っていた以上に大変でした。 ベンチャーキャピタリストとして、若い頃から、様々なベンチャー企業の経営に関わってきましたが、社長になってからの重みはぜんぜん違いました。私の場 合、グループ会社の企業再生からスタートしました。赤字状態の会社の立て直し・撤収や外部への売却など色々な問題が山積みでした。1からスタートした場 合、全て自分のやったことの結果なのですが、自分の社長就任以前から決められてきた枠組みの中で行わなければならず、所与の条件がある環境だったので、 色々なことがありました。しかし、短期間で問題を解決することができたのは、ベンチャーキャピタリストとして仕事をしたり、大手の銀行で働いたりした経験 があったからだと自分では思っています。
困難を乗り超えるという点では、うまくいかなかった時、精神的に辛い時に、私の気持ちを理解してくれる身近な存在がいたということが大きかったと思いま す。私も含めて3人のコアメンバーがいるのですが、このメンバーの存在は何物にも変えられない貴重な存在ですね。うまくいかなかった時、問題が起こった時 に親身になって相談できる、同じ気持ちで考えてくれる存在がいるということは、社長の自分がやるべきことをやり遂げなければならないということを思い返さ せてくれます。会社経営をするときには信頼できる何人かのメンバーとやることが非常に大事であると思います。一人では会社経営はできませんから・・・。私 にはビジネスパートナーがいるのですが、私とは得意不得意など、全く違うタイプです。お互いが違う強みを持っていて、お互いの能力を相互補完し合い、お互 いを思いやることができる存在がいることも幸いでした。他には、自分が何で会社経営をやっているかを常に意識・確認することも大事であると思います。目先 のことに捉われることなく、全体を見据えて行動することが非常に大切であると思います。ですから、私は10年、20年先のことを常に見据えて行動していま す。目先のことだけではなく、大きな方向性を見ることで、冷静に自分の置かれている状況を把握することができ、物事に一喜一憂せずに済むと思っています。 ただ、それは、今も努力中のことです。
一概には言うことができないですが、ある程度の法則性はあると思います。
まずは、自分に対する“約束”も含め、「約束を守ること」です。そして、「忍耐強いこと」であると思います。中長期的な目標を決め、その目標達成のために粘り強く努力し続け、実行することができるかどうかが非常に大切です。性格的な面では、感情をコントロールすることができるかどうかが大切です。私自身、 けっこう感情的な面もあるのですが(笑)。しかし、目標さえしっかりしていれば一時の感情が自分の夢や目標を上回ることはないと思います。その意味でも、 社長はしっかりとした価値基準を持つべきであるし、会社としてしっかりとした目標を持つことが極めて重要であると私は思います。そして、ベンチャー企業の社長は、ordinary(ありふれた)ではいけないと思います。自分らしさを持つべきであると思うし、自分はこうしたいという強い思いを持てるかどうか が成功できるかどうかの条件になると思います。そして、自分の考え・理念がよいものであるという確信があれば、会社を大きくして、より多くの方に自社の サービスを使ってほしいと思う、それが、自然な流れだと思います。
私は、実は、学生起業はお勧めしません。よほどなにか事情がない限りしない方がむしろよいと思っています。 起業を目指している学生の方々に、そんなことを言うのは、申し訳ないのですが・・・。私の考えとしては、若いうちはある程度レピュテーションのある会社で よい経験を多く積むことが大事であると思っています。社会人としての最低限のマナーを学び、枠組みの中でビジネスの進め方をしっかりと身につけることが大 切であると思います。そういう経験がないと、ちょっとしたことで失敗してしまったり、事業を前に進められなかったりしてしまうのではないかと思います。 知っていればなんてことないことでも、知らなかったがゆえに大きな間違いをしてしまうということがビジネスの場面では起こりますので・・・。私自身、若い 時にベンチャーキャピタリストとして自分のファンドを集めて運用・投資し、さらにはコンサルティングをして投資先企業の成功・失敗を経験できたことは本当 によかったと思います。自分たちのベンチャーキャピタル会社自体の株式公開(IPO)も、経験しましたし・・・。いきなり起業するのではなく、私は金融機 関などの組織での経験を積みました。そして、そのフィールドを使って、よい経験を積み重ねることができ、人づきあいの幅も広がりました。そういうものを 持って、私は社長として登板しています。社長になって何年目かということがとても重要なことだと、最近つくづく思いますが、同時に、社長になるまでどのよ うな経験を積むか、いかに信用力や人脈を築き上げるのかが大切であると思います。勿論、私自身、これから、社長としての実績を積む必要がありますが、社長 になるまでのキャリアがしっかりしているかどうかで、社長としての成長スピードは変わってくるように思っています。若いうちは、目先の損得よりも、よい フィールド・環境で、たくさんの良い経験をしてください。