価値観の取捨選択、そして創造
株式会社ALMACREATIONS 代表取締役社長 / 神田昌典part2
今はそういう環境ではないけどね。
でも僕はその点では楽観的なんです。皆さんのような方がこうしてこういう話を聞いてくれているわけでしょ。そして、うなずいてるじゃないですか。この話を40代の方に話しても右から左ですよ。学生のうちからこういう話を聞いていると全く違いますよね。
更に教育の現場では、本当に驚くべき事に、今の子達というのは、小学校六年生がもう国を背負っていますからね。
学校の先生がその小学生に「君は将来何やりたい?」と聞くと、
「僕は南米を拠点にしながら全世界でピザ屋をやりたい。でも単純にイタリアのピザを売っても面白くない。日本の思想性や文化だとかそういうことをピザに込めて売っていくんだ。」と。
そういうことを学校の先生に語っているんですよ。
また、震災後の今、日本を元気にしたいという希望を口にする小学生の子ども達が増えています。それは、誰かが教えたわけではないので、先生は目をまるくしているわけです。
そういうことを考えると、日本というのは十分やっていけると思います。
また、日本人のチーム力というのはものすごく卓越しています。個人で作れないクリエイティビティを集団で作り込めるわけです。
日本人の国民性から言うと、非常に良質な人間というのがチームで動いたときに良質な結果、アウトプットというのは非常に出しやすいんですよ。そこは日本に生まれたことに、僕はもう、感謝だと思うんですよね。
更に、日本の言語だとか、それから四季だとか引き継いだ文化によって、レベルの高いクリエイティビティというのはやはりあるんです。
これは何でわかるかというと、僕はフォトリーディングやマインドマップというツールを海外から持ってきているのですが、例えば、全世界に比べて日本にツールが遅れて入ってきたとしても、最も先に吸収するのが日本人なんです。びっくりするんですけどね(笑)。
そのような面から見ても、ビジュアルで把握する能力、言葉に書かれてない部分を阿吽の呼吸で感じ取る能力が非常に高い。またそれを一人で感じ取るわけじゃなくて、共感能力で、言葉にしなくても全体でどういう目的に向かって動いているかということに同調できる能力が非常に高い。
それがマインドマップでもフォトリーディングでも教えていてわかるんです。ひとりが出来るようになると、次から次へと出来るようになるんですよ。百匹目のサルの現象ってあるじゃないですか。そのスピードが速いのが日本人なんです。
だから、いちど方向性を決めれば、一気にみんなが出来るようになるんです。
おそらくコンピューターゲーム選手権をやったら、日本人は相当なレベルだと思うんです。いわゆる言語を使わない世界で、イメージを組み合わせて新たに発想するということを、オンラインRPGでやるとなると、おそらく日本人が優れたゲーマーだと思うんですよ。
それを今のところは残念ながら、王冠を取りに行くとか聖杯を探しに行くという方向に向かっていて、実益というか社会的な難問解決につなげられていません。でもそれをつなぐだけなんです。
大人の頭の使い方とゲーマーの頭の使い方は全く違います。ゲーム世代の人達以降はそれが当たり前になっているので、方向が社会的な難問とかソリューションを生み出すというところにいったとたんに、ほとんどゲーム感覚でみなさん協力し合うんです。RPGのノリで。
そこには、組織も会社も必要ないわけですよ。必要に応じて最適な能力を持っている人達がチームを組んで、ミッションを完了させて終了と。これが当たり前のように起こって来るんです。
そういうことが出来るという意味では、日本に生まれたことはやはり、言ってしまうと日本人って特別な民族ですね。ただそれだけの能力があるわけだから、ある意味では責任も伴うとも言えますね。
もちろん僕はフォトリーディングやマインドマップが必要だと思って、海外から持ってきたり、全脳思考というツールを創り出したりしました。でもそれを言うと、神田さんはそのツールを売りたいんだという風に思われるかもしれない。それは僕の本意ではないのです。
これらはツールじゃないんです。根本的に。だって学んだからと言って意味なくないですか。
例えば明治維新の志士たちに、必要なスキルはオランダ語ですか英語ですか、というのは違うよね。結果として、福沢諭吉は英語を学びました、簿記が出来ましたという話であって、全て結果なんです。
大切なことは、誰とつながっているかという話です。皆さんはどういうコミュニティに属しますかということなんです。
起業と言ってもいろいろなコミュニティがあります。上場を目指すコミュニティもあれば、アフィリエイトやせどりで手っ取り早くお金を儲けるというコミュニティもあり、または、社会的な起業を求めるコミュニティもあるわけです。
そうすると、全部に通底するスキルは何かという話ではない。そこは、人や目的によって変わるわけです。
だけどみなさんの価値観、ある意味では世の中の価値観というのは、圧倒的にソーシャルなビジネスにシフトして行かざるを得ないですよ。時間の問題で。
金銭的な価値、いわゆる金融による時代は、遅くともみなさんが亡くなる頃には崩壊しているでしょう。ということは、資本市場というのは旧来の市場になってしまいますね。資本市場というのはいわゆる上場するようなところとかね。
このように、どのコミュニティに属すればいいかということが一番重要なのであって、何かのスキルを学べば解決策が得られる、というものではないのです。
気づかないうちに身についています。
例えば僕は、さっき言ったけどアフィリエイトから始めなかったというのは非常にありがたいと思っています。そういう時代じゃなかったというのもありますが、僕の時にもバブルはありました。
「証券会社に勤めて、手っ取り早くボーナスを何十ヶ月分もらって…」という世代に生まれたわけです。だけど僕の場合は、バブルの最高潮の時に(外務省職員として)ナイジェリアに行っていたんです。だからアフリカ的な、途上国的な感覚も持っているわけです。ですから日本だけを見ているわけではない。
じゃあそれがスキルかというとそうではありません。
また、僕が外務省に就職をした時には東京サミットがありました。レーガン、サッチャー、中曽根首相がいたような時でした。それってスキルなのかと言うとスキルではありません。