価値観の取捨選択、そして創造
株式会社ALMACREATIONS 代表取締役社長 / 神田昌典part2
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その時に僕が体験したことは、盛田昭夫さんがすぐ近くの距離にいたという話です。その一瞬で違うんですよ。
みなさんの世代で「盛田昭夫」であったり、そういう人達というのは神様みたいな人じゃないですか。僕もみなさんと同じ立場なんですよ。たまたま20数歳の時に外務省に入って、そこに盛田昭夫さんがいて、「ああ盛田昭夫さんってこういう人なんだ」と思う。
でもそれで年齢重ねていくと、盛田昭夫さんは亡くなっても、僕は「盛田昭夫」という人から受けた強烈な印象を元に自分自身を形成していくわけですよね。クリントン大統領が、幼い時にケネディ大統領と握手して、それで大統領になると決めたわけですから。そういうものなんですよ。
「それはスキルですか」と言ったら、スキルじゃないんだよね。
スキルは持っていてもいいかもしれません。だけど、スキル主導じゃないということですよね。さっき「起業というのは小さい」と言ったのはそのことで、今までの起業でちょこちょこ成功した人を見てしまうと、それが人生なのかなと思ってしまいます。だけどその成功というのは、たまたまお金が道路に落ちている時に拾い集めてきたというだけの話で、自分の力でお金を作ったわけじゃないんですよ。
そう考えると、みなさんの世代というのは、もっと大きなビジョンを持って頑張らないとねって思います。頑張らなくてもみなさんが食べられないことはないんだけど、他の人が飢えちゃうから。
混乱するんですよ。この本自体も混乱で、僕の話も混乱というのは本当にその通りなんです。混乱するのが正常な反応だと思うんですよ。
でも、心の奥深くで、「この話が本当になるだろう」とわかってしまっていると思うんです。だって、今の世の中がそのまま続かないのは見えているんですから。
それにも関わらず、能力のある人達は、今の価値観の中で一生懸命能力を上げようとするわけです。でも、その価値観の中で能力を上げたとしても、その先には全然違った未来があるのかもしれないということを、今日ここでお話ししているわけです。
新しい価値観で出された本というのも今のところないわけです。というのも、本を書くような人達は旧来の価値観で成功してきたので、やはりそれについてのお話が多いわけです。
だから混乱しない方がおかしいんですよ。1945年の8月、天皇陛下が終戦のアナウンスをした時に、命を断った人だっていっぱいいるわけだから。それぐらい混乱することなんですよ。「価値観が変わる」というのは。
でも、混乱した結果、考えるよね。おそらく相当考えると思うんですよ。
僕の言っている事も、その他の一般的に言われてるような事も、先生が言っている事も、先輩が言っている事も。ある意味では、全部、何が自分にとって正しいかという話なんです。他の人や世間じゃない。何が自分に取って正しいかということを、自分自身が考えていかないといけないわけですね。
そして、時間はかかったとしても、おそらくみなさんは描き取る力を持っています。だって、まだ若いのですから。これが34、5歳だと大変なんですよ。ローン組んじゃってたりしますから(笑)。
例えば、若くして結婚しますと。それで、優しい人で、今までの価値観のなかで周りに対してちゃんと責任を取っていこうという人であればあるほど、30年35年ローンを組んで縛られてしまうわけですね。自由がきかなくなってしまうんですよね。
だから今、いろいろな面で情報を聞いておいて、「今までの世の中と全然違う社会が始まるのかもしれない」と考えてみて下さい。
混乱すると言っていながらもひとつひとつ、例えば、確かに高齢化社会に入るわけだから、健康、医療、これは避けられないねと。日本の産業を作っていくとすれば、今までの技術力を活かして、健康、医療、エネルギー、さらにはロボット産業に進まざるを得ないのはわかるじゃないですか。
そうすると、目の前で見ている、「手っ取り早くインターネットでお金を集める」というのはどうでもいい話になってくるわけですよね。こういう話で悩まないと、混乱しないと、間違った方向に行っちゃうと思うんです。間違った方向というのも世の中としては必然なことかもしれませんが。
例えば、第二次大戦中に混乱しなかった人達は、前線に送られて、玉砕されていったわけです。それは、彼は尊い命を国のために犠牲にしてくださったわけです。ただ、リーダーの人達は、少し別の観点を持っていたら、その部隊に属する人に別のことが出来た可能性があったのかもしれない。
今「山本五十六」という映画をやっていますね。
山本五十六と、それからジャーナリストがいらっしゃるのですが、ジャーナリストは、「これが民意だ」と言って大本営に基づく報道をずっとやっていたわけなんですね。でも、それで周りをどんどん巻き込んでいったというのがあります。
それに対して山本五十六は、自分が戦争のきっかけを作ってしまったわけですが、現実を見据え、できるだけ早めに講和に持っていこうとされていた。
だから混乱するのは当たり前なんです。けれども、今の時代というのは、混乱しないようにするために、間違った方向に一気にアクセルを踏んでしまうのです。ということがあるから、やはり、よりリーダーに近い層、高いレベルの教育を受けている人が、混乱したなかで、現実的な新しい時代に向かっての橋渡しということを、賢く、やっていく必要があると思います。
ですから、僕の希望は、『2022』という本でもいいし、今回のインタビュー記事でもいいので、出来るだけ、多くの学生の方々に、この言葉を届けていただければと思います。