死と直面すると人生が非常に輝いてくる
ホロトロピック・ネットワーク 代表 / 天外伺朗
今の日本は「戦士の社会」です。明治時代は富国強兵が方針、そして今は富国強兵がちょっと変わってきて経済成長に移ってきている。そして経済的に成長出来ないもんだから「失われた20年」なんて言っていますね。でもそれは富国強兵の常識をそのまま持っているからそうなるのです。
つまり戦士が必要で、一番重要という考え方です。そうすると戦士以外の全部を下に見ます。だから老人、子供に重きを置かないんです。そして戦士でも病気になると戦えなくなるから早く治して戦士に戻そうとする。もう富国強兵というのは終わっています。経済成長というのもありえません。
僕の医療改革のモットーは「今世の中で一番必要なのは、ひとりひとりが人間的な成長をして自分を高めていくこと。そのために病気というのは素晴らしいチャンス」ということです。すると、「病気になって病院に行って病気を治す」というパターンそのものを変えたほうがいいだろうと思うんです。極論すると病院を全部無くそうというのが今の僕の医療改革です。
だから言葉も、「病院」ではなく「ホロトロピックセンター」という名前を提唱しています。「ホロトロピック」という言葉はトランスパーソナル心理学を提唱したスタニスラフ・グロフという人が、自ら開発したブレスワークにネーミングした言葉です。意味としては「全体性に向かう」。これだと少しわかりにくいけれども、仏教でいう「悟りに向かう」と同じ意味です。彼はそのブレスワークが単なる問題の解決とか治療とか癒しということではなくて、人間的な成長が出来るのだということで、そういうネーミングにしているのです。 ホロトロピックセンターというのは、病気の修理工場ではなく人々の意識の成長、進化をちゃんとサポートするところです。ですから生まれてから死ぬまでのケア、そして健康な人も病気な人もケアしなければなりません。今までの「病院」とは全く違う概念なわけです。
そのようにして、医療改革を提唱してそういう本を書いて、そして医療者がたくさん賛同してくれて、今は北海道の札幌から鹿児島の指宿までたくさんのクリニックが僕の提唱したことに向かって歩みを続けてくれているのです。 だから、何か問題を発見してああしようこうしようと動いているわけではなく、ごく自然にそっちへ来ているのです。
そうです。上記のような活動をしているあるとき、ソニーがおかしくなったんです。実際に表に出たのは2003年のソニーショックでしたが、その2年ぐらい前からうつ病がものすごい勢いで増えてきていました。その理由を探すうちに、チクセント・ミハイという人の「フロー理論」でおかしくなった原因が読み解けることがわかりました。それでアメリカへチクセント・ミハイに会いに行きました。その時に経営の問題、そして「フロー」が非常に大切だということがわかりました。
「フロー」というのは、夢中になって何かに取り組むことなのですが、95年からソニーが合理主義経営を入れてしまい、フロー経営を破壊したことが大問題だとわかりました。これはさっきの医療の話とも繋がるのですが、フローに入るということは人間的成長を伴うんです。今の教育を見てみるとそれが全く入っていない。意識の成長、進化ということも全く考えていない。結局さっき言った戦士のための教育になっているんです。お題目では多少あるけれども、ほとんど入ってないということで教育改革も始めていったんです。
それは一言で言うのは難しいですね。あらゆる宗教は大変色んな教義がありますよね。ただ、まともな宗教はこの人間的な成長進化を目的としていると言えます。
やはりちゃんと自分を見つめることです。外側ばかり追わないで、つまり社会で成功しようとかお金を稼げるようになろうとか。あるいは表面的な能力を身につけるとかそういうことではなくて、自分の内側に常に視線を向けているということです。
基本的な心構えとして、外面的なことだけでなくて内側をしっかり充実させていくということですね。瞑想はそのための手段の1つとして悪くないと思います。