欲の置き所はその人の価値観次第
NPO法人ETIC. / 宮地治男
93年 早稲田大学在学中に、「ETIC.学生アントレプレナー連絡会議」創設
95年 早稲田大学 卒業
00年 ETIC.法人化
高校時代はマスメディアに入って社会に発信されている情報を変えてきたい、という思いを持っていたました。
はじめは、「社会の意識を変えていきたい、社会を進化させたい」と考えた時、やはり政治の影響が大きいと思ったのですが、当時は政治という角度からアプローチして変革を起こしていく事は余り現実味がなかった。加えて、自分が権力を握る側にまわるというのは、どうも合わないなと思ったのです。従って、マスメディアを通じてネガティブな情報が氾濫している状況からまずは変えていこうと考えて、マスコミに入社する人が多い早稲田大学に入学します。
今の時代には、今の時代にふさわしい幸せや生き方の追求の仕方、価値観があるんじゃないかと思っていて、この感覚は子供のころから持っていました。 当時の社会が当たり前だと思っていた、『一生懸命勉強していい大学に行って、いい会社に入る』とか『お金があれば幸せになれる』というような価値観は変わっていくと予期していました。一方で、教育現場や親の意識、マスメディアの意識はなかなか変化していくように思えない。いずれ自分達の世代が求めるものと、それに対する社会や教育などのサポートとのギャップが大きくなるだろうと思っていたのです。
この社会の空気を変える、1つの仮説として「マスメディアを変えるべきだ、それが世の中を変えることに繋がるだろう」と仮説を立て、大学に行きました。
先輩が起業支援する組織でアルバイトをしていて、起業家を目指す人に融資をしているという話を聞き、学生であっても自分達で会社をつくって事業をつくり出していく選択肢がある事に衝撃を受けました。自分も周りの大学生もどこかに「就職する」というイメージで大学生活を送っているけれども、「自分で仕事をつくる」という選択肢がある事を学ぶ機会を提供してみたいと思った。それが最初の切っ掛けです。
起業を促進するというよりは、起業家という生き方を選び、その生き方を貫く人達と触れる事を通して、若者達が「自分の人生を自らが切り開いていける」という可能性に気がついてもらいたかった。そして「仕事は自分でも創れる」という視点を持てた時、「大きな会社に入れて頂かなければならない」という自分で自分を縛り、限定していた思いから解放される可能性があると思ったんです。
自分としては突拍子もない事を始めたつもりもなく、むしろ潜在的に自分達の世代やそれ以降の人達が必要とするだろうニーズがあると思ったので、こちらがそんなに労力を使って働きかけなくても、情報やチャンスを少しでも提供するだけでも変わっていくだろう、という確信に似た思いで「学生アントレプレナー連絡会議」を通して、勉強会やイベントを始めたのです。
当時は私を含めて3人ぐらいで主催をしていたのですが、参加する人達は起業志望の人達が中心で勉強会やイベントが主でした。起業志望者の相談の場みたいな雰囲気でしたね。そこから、94年の5月に「就職ちょっと待ったシンポジウム」という対外的なイベントを初めて行い、今までマニアックに「起業したい」という人を集めていたのが、もうちょっと広く同世代に訴える場をつくりました。
就職に対して「自分はこのままでいいのだろうか」と疑い始めた最初の世代が、恐らく我々の世代なんです。大企業に行く事が本当に自分にとって大事な事なのか?と疑問に持っている同世代が多かった。起業までは考えないけれども、そういう疑問を持っている人達が出てきているのを感じていたので、そういう人達やベンチャー企業を就職先として意識した人達に対してメッセージを発信しようという事でイベントをやりました。
このイベントが世の中的にもわかりやすかったようで、結構メディアに取り上げられたりした。そしてその後も就職やキャリア形成を切り口にしたイベントも重ねる中で、その延長上で現在のインターンシップの事業もスタートしました。