日本のSBIから世界のSBIへ
SBIホールディングス / 北尾 吉孝
P.F.ドラッカーは次のように述べています。「アジアに位置しながら史上稀に見る西洋化に成功した日本が、その舵取りを果たしていく責任を背負っているのです。日本には太平洋をはさんでアジアとアメリカを結ぶ「橋」になることが求められています。」
なぜドラッカーはそんな事を言っているのか。彼は世界の覇権国であるアメリカが徐々に力を弱め、そして一方で中国の急成長により東西の対立が生まれると考えていたのです。そしてその東西の対立を避けバランスを保つのが日本であるということなのです。
そのことは、ドラッカーだけでなく森信三先生も安岡 正篤先生も予言していたのです。何十年も前のことですよ。やっぱりその人達の共通点は学問をしていた事。事業経営でもこの先どのような事が起こるかということをどんどん予見していかなければなりません。
自己維新の三つのプロセスは「尽心」、「知命」、「立命」です。安岡先生は『知命と立命』の中で、自らの「命」を知ることの重要性を次のように語られています。
「『命』を知らないものであるから、せっかくの人間に生まれて一生を台無しにする。(中略)人と生まれた以上、本当に自分を究尽し、修練すれば、何十億も人間がいようが人相はみな違っているように、他人にない性質と能力を必ずもっている。それをうまく開発すれば、誰でもそれを発揮することができる。(中略)これが東洋哲学の一番生枠であります。」
人間一人ひとり、生まれたときから点から与えられた命、すなわち使命があります。その使命が何たるかを知るために、自分自身を究尽する必要があるのです。そして、自分にどういう能力があり、どういう性質を持っているかを本当に知った上で、それを磨いていけば、必ず世の中に役に立つし、人のためになります。
大いに起業してもらいたいと思うのですが、ただ儲けたいからだと成功しません。世のため人のためになることをする、という志があってからこそ事業になるのです。
また『学んで思わざればすなわち罔し。思うて学ばざればすなわち殆うし』という言葉も忘れてはいけません。何かを学んでも考えることなしには身に付かないし、考えても学ばなければ危険だ、ということです。
そして、『時務を織るは俊傑に在り』(『十八史略』)というように、時代の動きを明察し、時局を洞察し、英知と実行力のある見識を以っていかなる出来事にも悠然として処してゆける人物になってほしいと思います。