日本のSBIから世界のSBIへ
SBIホールディングス / 北尾 吉孝
1974年 野村證券(株)入社
1989年 ワッサースタイン・ペレラ・インターナショナル社(ロンドン)常務取締役
1991年 野村企業情報(株)取締役(兼務)
1992年 野村證券(株)事業法人三部長
1995年 孫正義氏の招聘によりソフトバンク(株)入社(常務取締役管理本部長 )
2005年 SBIホールディングス(株)代表取締役執行役員CEOとして現在に至る
公益財団法人SBI子ども希望財団の理事、SBI大学院大学の学長、社会福祉法人慈徳院の理事長も務める。
事業というのは基本的に一人では出来ませんから、自分の周りに様々な人物が集まってくるような魅力のあるような人でないと大きな事は成し遂げられません。
先日もたまたま「賢者の選択」という番組の収録があって、「思い出の品」を見せてくれと言われたのである写真を持っていきました。創業10周年となった2009年、僕と一緒に創業から働いてきてくれた社員を招待して「感謝の夕べ」という会を開いた時の写真です。野村證券にいた頃、僕は結構厳しい上司だったと思います。でも僕が野村を辞める時には、多くの部下が僕についてきてくれました。ありがたい事なんだけど、この人達の将来がかかってると思って当時はそれが重荷になった面もありました。だからこそ、野村で働いていた時よりももっと裕福にさせてあげようと思って頑張りましたね。
鉄鋼王アンドリュー・カーネギーのお墓にはこう書いてあります。「自分より賢き者を近づける術知りたる者、ここに眠る」と。そのような、人を惹きつける人間力を身につけるべきだと思います。
一つには、「共有できる“志”を持っているかどうか」。“志”というのは「世のため人のため」という心です。これが「自分のため」になると“野心”になってしまうんですよね。志をきちんと持って、人間的魅力がある人なら、能力的に優秀な人でなくても起業家として成功することも十分可能です。なぜなら有能な人材が、その志に共感して自然と集まってくるからです。だから起業家に一番大事なのは、純粋な志を持っているかどうかということです。
もう一つには、「信頼出来るかどうか。」すぐころころ言うこと変わるような人は信頼出来ませんよね。このような人間の基本的な部分が重要なんだと思います。
論語の中に「徳は孤ならず 必ず隣有り」とありますが、徳が高い人の周りには同じように徳の高い人達が集まってくるんですよね。 それからもう一つ挙げるとしたら、「単純でない人」です。あらゆる引き出しがあり深みのある人にもまた、魅力を感じると思います。例えば、猪突猛進的だけの人はあまりよくないと思いますね。ある時は猪突猛進な時があっても、ある時は熟慮して先見性をもって考える。そういったバランスのある方が魅力的な人なのだと思います。
どちらもあると思いますよ。「育ち」の部分も大きいと思います。僕は慶應義塾大学出身ですが、幼稚舎から慶應にいるような人達は知識レベルそう高くはないが、地頭がいいことが多いと感じました。天賦の才、また家庭や学校での教育環境はかなり本人の知識レベルや思考力に影響があると思うんです。こうした才に恵まれた人にもある種の魅力がありますね。
でも、やはり魅力的な人になる為には、やっぱり学問しなきゃだめですね。僕も学生時代には安岡正篤先生の本や古今東西の哲学や歴史の本、また経済学部だったから経済学関連の書籍など網羅して読みました。昔の経済学の本は今みたいに数式ばかりの内容ではありません。マルクスもそうなんですが、社会に関わる様々な知識を網羅して、その中で得た理論を書いています。だから社会全体を良く見て、観察して、そして洞察していくことのできる非常に優れた人達が経済学者になっていたんです。例えばアダム・スミスが『国富論』を書いているんだけど、一方で『道徳感情論』なども書いています。昔の経済学は広範囲な知識を土台として書かれていました。