しなやかに生きる
株式会社ティ・シー・クリエーション / 松山 隆幸
株式会社ティ・シー・クリエーションという会社で、人材教育の会社です。新人研修だとか、マネージャー研修をやっていました。当時僕は20代だったのになぜ研修が出来たかというと、知識を教えるプログラムじゃなくて、野外でキャンプをして、アドベンチャーベースドカウンセリング(Adventure-Based Counseling)という手法に基づいた、アウトドアでのゲームを使った教育をするプログラムだったからです。パートナーが箱根に施設を持っていたので、そちらで研修を実施していました。アメリカではよく使われている研修手法なんです。7、8人のグループでゲームを進める中で、普段はなかなか気づくことのできない自分の役割に気づくことができます。このプログラムを終えるとチームは確実に変わります。ただ、キャンプで学んだことをその後の職場で生かせるかどうかが大事なんですけれどね。
僕はいまだにある会社の研修だけは忘れないんです。50人くらいの中小企業で、50人を3グループに分けて研修しました。その中の1チームだけが「蜘蛛の巣」というプログラムをなかなかこなせなかったんですよ。どういうプログラムかというと、二本の木にクモの巣状にロープを張って蜘蛛の巣状に8個の穴を作る。そして、「1つの穴は1人しかくぐれない。」というルールで、そのロープの穴をくぐって向こう側に行かなくてはいけない。これは一瞬できなさそうに思うでしょうけど、みんなで協力すれば30分位で出来ちゃうんですよ。ただ、そのチームは出来なくて。 そのチームの中には職場にただ一人の女性社員の方がいて、その人は職場で周りの人と距離があって溶け込んでいなかったんです。それで、やっとそのチームが成功した時は日が落ちて真っ暗だったので、みんなで手を繋いで30分くらいかけて山を降りたんですね。
宿について、その日一日のゲームの振り返りをするときに、その女性が泣きながら、「この会社に入って初めて社員の人と手を繋ぎました」と言うんです。手を繋ぐという事は簡単なことですけど、彼女にとってはすごく大きなことだったんですよね。 結局これがコミュニケーションなんですよ。大事なのは、コミュニケーションといってもメールといった言葉のコミュニケーションだけじゃなくて、握手といった直接手に触れるスキンシップとか、電話とか直接会って話すで声の響きといった言葉以外のコミュニケーションも意外に大切なコミュニケーションなんです。そういう研修をやっていました。
僕は理科系でひたすら研究をやっていた、そこは「クリエイティブなことをしないと意味がない」という場所ですよね。そういう中で「創造性ってどうすれば出てくるの」という疑問があったんです。つまるところ研究って一人じゃできない。みんなでディスカッションして新しい発見が生まれるんです。ただその中に人間関係の嫌な部分が入って、新しいイノベーションが生まれないのは、なんか違うなと思っていて。純粋に研究をやりたいからそこにいるのに、意外と人間関係に惑わされている。
アメリカに行った時に アメリカの子供たちってのびのびと過ごしたことで、必死こいてやるパワーがあるんですよ。だからアメリカはベンチャー志望の、リスクを厭わない人が出てくるんですよね。アメリカから日本に帰ってきて、日本の組織や研究職を客観的に見て「これはダメだな」と思った。受験受験でやってきた日本人と、好きな事をとことんやってきたアメリカ人との違いはやっぱり教育だなとひらめいたわけです。そういうことを感じていたら、たまたま教育分野で起業のチャンスがあったので起業したというだけ。本当に出会いと偶然。ただその偶然に僕の疑問がフィットしたんですよね。今では必然だったのかなと感じています。 物事ってやっぱり始めてみないとわからないということもあるんです。変えたいと思ったらあれこれ深く考えずにまずやってみたほうがいい。実際に動いて、それから考えた人のほうがチャンスはあると思いますよ。