しなやかに生きる
株式会社ティ・シー・クリエーション / 松山 隆幸
経営のことを考えたときに、この研修が、東京電力の中堅社員研修や花王の新人研修には導入していただいたものの、沢山の企業に受け入れられたかというと、なかなか思い通りにはいきませんでした。この研修だけじゃ食べられなくて、東京に戻ってはコンピューターのセットアップとか、社内LAN を作ったり、インターネット関連の仕事をしていました。そういう事をやっていくうちに、その東京の社長に箱根の方はちょっと落ち着いて、東京で仕事をすることを考えたらと言われたんです。箱根の施設維持にもお金がかかっていたので、自社の施設は閉じました。初めての大きな失敗でした。でも一方ではその頃Windows95が発売されて、IT関連の仕事が増えてきたんです。そうしているうちに箱根の施設のオーナーが「ネットワークやっているんだったら、うちにたくさん仕事があるから、一緒に会社を作らないか」と言われて立ち上げたのが、今のレインボウェアという会社。これが今の本業です。ケーブルテレビのインターネットサービスの立ち上げや、ホテル予約のIT化とかそういうことからスタートした会社です。
最初に勤めたところに一生勤めるっていうことはないじゃないですか。なにか自分の成長に応じて「こういうことやりたいな」「ああいうことやりたいなと」思ったときに、変われるしなやかさ、「しなやかに生きる」ということが大事だと思うんです。自分の成長に応じて仕事や環境を変える方が人間らしいんじゃないかな。
仕事にはお金を稼ぐという面もあって、それも必要なんだけど、「仕事」と「生きる」がオーバーラップしないとアンバランスなんですよ。なぜかと言うと日本人はもともと農耕民族で、自分で作った米を食べて生きてきた訳だから、働くことと生きる事が直結していたわけですよ。空いている時間は、民芸的なモノづくりをしたり、人によっては短歌や俳句を読んだり文化的な活動をしていたわけです。そういう仕事のあり方がこれからの時代には必要かなと思います。金儲けを基本とする経営戦略、・マーケティング、…。全ては勝つため儲けるため為というのは違う気がします。 会社というのはそれぞれ役割が違うわけですよ。みんながみんな同じ方向に走ってもしょうがない。人間個人もそうですよ。同じような生き方をしてもしょうがない、比べても仕方が無い。自分がどうあるべきなのかと自分に問い続ける。問い続ける事によって、勉強して、成長するんですよね。先が見えない不安に駆られている人もいると思うけれど、ちょっと発想を変えて「自分がどう変われるのかな」と思うと楽しくなるんですよね。だから、「有名な会社へ入社して・・・」という価値観から、「自分が成長できる仕事は何だろう」って問い続ける価値観へ変わらなければいけない時代だと思います。仕事は自分の成長のためにあるんですね。同じ企業に定年までいる人はごく僅かでしょうし、約40年会社で働いたら、また一人の人間としていきなければならない。だとしたら今から「一人の人間としていかに生きるか」を考えはじめてもよいのはないでしょうかね。
再び新たな人材教育のビジネスを始めます。これらが私の人生の最後を飾る仕事になります。8人くらいまでの少人数を対象に、ビジネス知識の講義だけでなくて、教養というか、五感が震えるようなプログラムを実施します。詩の朗読ですとか、リベラル・アーツ(教養)的なテーマとかね。そういう教育を通じて「心震わせる時間」の大切さを伝えたいです。学生のみなさんや、ビジネスマン・OLが仕事帰りにちょっと集まって話し合うというような。そういうサロンっぽいスクールを7月にオープンの予定です。仕事と生きることを重ね合わせる生き方、仕事以外に本来の自分を表現できる場を持つオルタナティブな生き方を一緒に探せたらいいなと思っています。