こころ豊かな人生
株式会社オルトプラス / 石井 武
はい。私が働いたゲームメーカーはやはり上場を目指していましたが、上場企業のグループに入ることで、本来の目的を達しました。私はそのタイミングで外に出ようと思いました。
そのとき、縁あってAQインタラクティブという会社の設立に参加しました。AQインタラクティブは設立から2年でJASDAQに上場し、その後は東証2部に上場しています。今では400人ほどの従業員をもつ中堅ゲームメーカーとなっています。
そこでの担当業務が一区切りした際に、社内ベンチャーのような新規事業として、ネットワークコンテンツ事業を立ち上げる機会に恵まれ、事業部長となりました。わずかな期間でしたがそこで多くの事を学びましたね。
そこで今度はさらに新たなビジネスを上場企業の事業部門としてではなく、いちベンチャー企業として立ち上げてみたいと考え、現在のオルトプラスを設立しました。今私たちが行っている事業は、意思決定の早い小さな所帯が有利なコンテンツサービスなので、大手のゲームメーカーと差別化できるコンテンツが作れるチャンスがあると思っています。
はい。現在はGREEさん向けにソーシャルアプリといわれる携帯コンテンツを提供させていただいております。競馬ゲームの「ダービーズキングの伝説」というものです。基本無料で始められるゲームの中で、有料アイテムを購入いただいたときに弊社に収益が入るというモデルです。
ソーシャルアプリでは、既に育成ゲームというジャンルはたくさんあるのですが、育てた先に友だちと競うことができたり自慢できたりする要素を用意していないゲームが多いと感じました。その点、競馬ゲームでは、育てた馬を最終的に競い合わせ、優勝するという目標があるんですね。
そういう意味で、競馬ゲームはソーシャルアプリに向いているかなと思います。今はユーザーさんも50万人以上となり、売上も順調に伸びています。
家庭用ゲームソフトなどのパッケージで販売されるコンテンツはいつ始めても同じクオリティで楽しめます。発売から時間が経ったコンテンツでも面白いソフトは面白く遊べてしまう、どうしてもいま新作として楽しまなければならない理由にも乏しいとも言えます。
でも企業としては次々にそういった過去の名作より面白いものを新作として提供しなければならい。これは正直つらいと感じていました。 それに対して、その一瞬にしか体験できないものには、皆さんが足を運び、その瞬間にお金を払うのですね。ライブやコンサートがその代表です。
ライブというものは、そこに行かないと体験できませんし、楽しめません。 ソーシャルネットのコンテンツも同じで、そこで遊ばれている世界があり、それは昨日とまた違う今日の世界が広がっています。パッケージで販売されている過去の名作に比べたら完成度は低いものかもしれません。
けれども、ライブ感や時間とともに変化していくコンテンツ、コミュニティとサービスが面白いのでユーザーは毎日のように集まり、楽しむのです。 このように日々動いていくコンテンツを扱う会社は、発売してからが勝負です。ユーザーの意見に反応し、追加開発していくことで、完成度を上げていきます。そのために、PDCAサイクルの早い組織を作らなければなりません。
比較的新しいジャンルのコンテンツということもあり、こういったライブ感のあるコンテンツを制作できる会社というのがあまり見当たりません。色々な会社が日々試行錯誤をしていると思いますが、弊社もその中の1つとしてライブ感のある大規模コンテンツを作っていきたいと思っています。
今でもリアルな社会で起こったことがネット上で話題になることはありますが、これからは徐々にネット上の出来事がリアルな社会で話題になる事が増えてくると思います。
趣味の世界などでは、身近に同じ趣味をもつ人を探せれば良いですが時間や場所の制約を受け、忙しい社会人などですとなかなかコミュニティに入るのが難しいですよね。
例えば、当社がゲーム化している競馬というジャンルなどは身近に好きな友だちがいないとなかなか思う存分話し込むなど難しいのですがネット上の競馬コミュニティではいつでも多くの友だちができます。またゲームではリアルな競馬友だちとしてはちょっと世代が違う同士でも競馬ゲーム同士として一緒に楽しめる良さがあります。
そういった良い点を集めたのがソーシャルアプリだと思っていますので、ソーシャルアプリを遊ぶことでよりリアルな社会生活とネット上のコミュニケーションがリンクし、こころ豊かな人生が送れる社会の実現に寄与したいと思っています。