誰も目をつけていないことに目をつける
株式会社NEWSY 代表取締役 / タカハシマコト
「NEWSYにやってほしい」という仕事の発注が増えたというのが良かったですね。僕は「しらべぇ」の主筆という立場とともにクリエイティブディレクター(CD)という立場でもあります。グループ会社である博報堂にはCDがたくさんいて、例えばある1つの競合プレゼンに対して、数人のCDがチームを作ります。電通さんからも何チームか出る。クリエイターは、自分なりの特徴があって、選んでもらわないといけない。「海外賞を取りまくってるタイプのCD」「デザイナー出身のCD」など、ある特徴を持つ人にそのタイプの仕事を頼もうと、広告クリエイティブの仕事の発注が来るんです。
その中で僕は、「ニュースサイトを持ってるCD」という旗を立てたいと思いました。このスタイルで博報堂でやってるのは僕だけだったので、必然的に僕のところに発注が来るんじゃないかな、と。例えばCMとPRという組み合わせはありますが、CMとニュースというような組み合わせはなくて、ニュースクリエイティブという新しいキーワードも作りました。
僕は博報堂1年目からコピーライターをしてきました。コピーライターには、東京コピーライターズクラブが主催する「TCC新人賞」を獲らないと一人前とは認められないという風潮があるんですね。司法試験みたいなものです。コピーライターというのは名刺に書いた瞬間コピーライターですから。かつては、「数年以内にとらないとあいつはコピーを書けないやつだ」と言われました。当時の若手は基本的に全員目指して、僕の同期も全員獲ってます。数年以内に獲って「あー良かった俺クリエイティブにしばらくいれるわ」と思ったものなんですね。でも今クリエイターの価値が変わってきて、今はTCCが海外賞にとって変わってしまっているんです。カンヌや、スパイクスアジアや、ニューヨークADCなど。僕らが若かった頃は「海外賞なんて日本のクライアントと関係ないじゃん」と言われて、クライアントが見ているのはTCCやACCでしょという風潮でした。それがあるときに「海外賞のほうが早道だ」と見つけた人間がいるんですよ。なぜなら当時、TCCやACCは獲るのが大変だったから。その代わり海外賞をとって、TCCより凄いでしょという空気を日本の中で誰かが作り、今ではこれが主流に近くなっています。僕はTCCの広報担当という立場もあるんですけど、TCCとしても、昔のような注目が集まらないのが1つの課題だったりする。昔はTCCを持っていたら権威だったのが、海外賞をもっているCDに抜かれてしまっています。
これと同じように「ズル」の作り方があるんじゃないかなと思います。それはたぶん、国内になかったカンヌがそういう価値を持ったように、今広告になかった「ニュースという価値」を持ってくると、今までとは違うハイウェイがあるんじゃないかなと。