「人」の好きなことを、「人」と共に広める
株式会社CINRA代表取取締役/杉浦太一
「人」に恵まれたところが大きいです。CINRAって外から見ると、音楽やポップカルチャーなどエンターテインメント性の強い事業なので、「好きなことを仕事にできていいな」と思われる方も、多いと思います。もちろん、好きだからやっているんですけど、当然好きという気持ちだけでは続きませんし、好きなことでお金を稼ぐのがピュアではないように感じていた時期もありました。でも、事業を続ける中で、自分たちが「やりたい」という想いがあり、それが人から求められてお金になっているということが、全部つながっていないとビジネスではないということを、少しずつ教えてもらってきたんです。そういうことを学ばせてもらったのは、お客さんだったり、先輩経営者だったりで、やっぱり人のおかげで続けられているんだなぁと思います。
Photo by Nariko Nakamura
そうですね、まずは始めてしまいます(笑)。 僕が始めたことを、社員が続けていってくれるからこそ、また新しいことを始めることができます。
そうですね。 自分だけが前に立って、会社のイメージ=自分というのはあまり性に合っていません。事業を立ち上げるというところ、いわゆる0から1は僕がやっても、1から10にするという行程でその事業を運営する人の色が出れば、それが一番会社の強さになると思うんですよね。だから、僕はそのはじめの一歩をつくっているに過ぎません。
0から1に関しては自分が好きだから何とも言えないんですけど、考えたことは計画して、まず動くこと、そして締め切りを自分で作るということが大切ですね。0から1の場合、誰も締め切りを設けてくれないので、結局忙しいとかやれない理由を自分でつくって実現できないことが多いので、まず、自分で締め切りを作る。
1から10にするのは、やはりコツコツやる力というものが非常に重要だと思います。それから、自分がやっている事業に対して、すごく肯定的な視点「今、これだけのことができている」っていう自信のようなものと、「全然ここが足りてない」っていう、否定的な視点を、絶妙なバランスで持ち続けることが大事なのではないでしょうか。肯定的なものが多くなりすぎると、自信過剰になっていきますが、否定的な方に傾くとやる気がなくなっていく。内省的な視点でそのバランスを保つというところが、難しいけど必要なんだと思います。
個人的なバランス感覚でいえば、自分の中で目標をしっかり定めておくことだと思います。しかも、その目標をできるだけ自分の評価だけではなく、市場の評価にしておくことが、公平に自分を見るために大事であると思います。たとえば「業界で一番の会社になる」では、ちょっと曖昧です。「○年後に○人のユーザーを獲得する」とかですかね。これが個人的なバランスです。そしてこれがチームの話になると、もっと面白いです。チーム内で肯定的な意見を言う人と、否定的な意見を言う人が出てくるんです。これは個々の性格の問題ではなく、組織である以上ある人数に達すると必ずそうなるんだと思います。肯定も否定も、どちらも組織運営のために必要な力学なんですよね。それをリーダーが総合的に掬い上げて全体の意見をまとめていく、そういう形でバランスを取っていくんじゃないでしょうか。
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