原体験から生まれたサービス・バイリンガル教育の「お迎えシスター」
株式会社Selan 代表取締役 / 樋口亜希
もともと「30歳くらいまでには起業するのかな」と漠然と考えていました。身近に起業している方々がいたため、自然と人生の選択肢の一つとして考えていました。
新卒でリクルートに入社し、リクナビの法人営業をしていました。昔から「グローバル」というテーマには興味があり、本業以外に、社外の「グローバル人材」をテーマにしたイベントに何度か登壇させてもらったり、運営スタッフを手伝ったりする中で、ふと自分の人生において「グローバル」「教育」「キャリア」この3つが重要なキーワードであることに気づきました。そして「このキーワードで何かしたいな~」と思い始めました。日が経つにつれて、その想いは強くなり、「よし、起業するなら今だ!」と思ったんです。その次の日に、上司に「退職します!」と伝えに行きました(笑)
事業については全く決まっていませんでしたね。会社のFacebookページだけ立ち上げて、「事業内容」の欄に「何をするかはまだ決まっていません!皆さん、ご相談させて下さい!」と書いていました(笑)あれ。もしかしたら、まだそのままかも…(笑)
リクルート時代は毎日、家に寝に帰るような生活だったため、事業アイデアを考える余裕もありませんでした。なので、とりあえず辞めてから、2、3ヶ月の間に事業モデルを考えようと思っていました。父親には「そんな無計画で辞めるのは、亜希の人生において最大のリスクだ!」と大反対され、「今辞めないのが人生最大のリスクだ!」と大反発したのですが(笑)、今思えば、「ムキになりすぎちゃったな…パパごめんね」と心の中でちょっと反省しています(笑)でも、あの時、起業を決意して、本当に良かったと思っています。こんなに楽しく、心が満たされる日々が待っているとは思いもしませんでした!
最初は、何をするかが決まっていなかったので、まず「ハッピーに生きている人々に話を聞きに行こう!」と思ったんです。お会いした方々には、たくさんのインスピレーションを頂きました。このワクワクを、独り占めするのはもったいないから、みんなにシェアしようと思い、「belong」というインタビューサイトを立ち上げ、記事にして、みんなが見られるようにしました。
「belong」では「アイデンティティ」をテーマにしていて、最後の質問に「あなたのアイデンティティーは何ですか」という質問を必ずしています。取材をしていて、意外に感じたことがあるんですが、それは、「幸せ」だと口にする多くの方が「死」について語るということです。「死」を意識しているからこそ、今を思いっきりハッピーに生きることができるんだ、ということを痛感しました。
アイデンティティーに特化したインタビューサイト「belong – 人生に、多くの選択肢を。」
そうなんです。「アイデンティティ」は私の人生のテーマかもしれないです。小さい頃は、人と違うバックグラウンドであることがすごく嫌だったんです。家に帰ると常に留学生のお姉さんが居ますから、友達を家に連れてくると必ずと言っていいほど「このお姉さん誰?」と聞かれました。母も中国出身で、母方の家系は中国を出て、フラジルやアメリカ、オーストラリアなどに移民したため、親戚で集まると、英語と中国語が飛び交うような家庭環境でした。友達に、日本語以外の言葉で話しているのを聞かれるのもすごく嫌でしたね。また、うちの夕飯には、肉じゃがも出てこなければ、煮物が出てきた記憶もありません。それどころか、色合いが不思議な料理が出て来て、恥ずかしいと思うこともありました。今思えば、自分のアイデンティティーに誇りを持てなかったことで、全てに自信を無くしていたんだと思います。
でも、小学校の時、家族でアメリカ・ボストンに引っ越し、考え方が変わりました。みんなが、自身のルーツに誇りを持って生きているアメリカという多民族国家で、自分のアイデンティティーを再確認できました。人と違ってこそ「私」なんだと認識できるようになったのです。私自身、自分のアイデンティティーに誇りを持てたのはすごく大きなことでした。小さいうちからアイデンティティーに対する考え方を身につけておけるのはとても大事なんです。だからこそ「belong」では「アイデンティティー」をテーマにしています。
中国の学生にかなり触発されましたね。中国の学生を一言で言うと、良くも悪くも「貪欲でずる賢い」です(笑)
中国の学生はみんな自分の「夢」を持っていて、恥ずかしげもなくそれを堂々と語れるのです。また、よくテレビでも目にするかと思いますが、中国人はとにかく規則を守りません(笑)何か困難が立ちはだかった時、どうすれば「解決」できるのか、もしくは「くぐり抜けられる」という表現が正しいかもしれませんが(笑)、「解決の糸口」を見つけるのが得意な国民だと思いました。
例えば、学内での出来事なんですが、北京大学は非常に学生数が多く、人気な授業の場合、応募数に対して5倍以上の申し込みがあることも普通なんです。そのため、授業選択期間の終わりに近づくと、人気な授業のキャンセル待ちを狙った学生が、徹夜で受講席に空きが出るの待っているんです。私も徹夜でパソコンの前に座り、ひたすら更新ボタンを押して、空きを確認していました。しかし、ある時から、いくら更新ボタンを押しても、全く残席が出なくなったのです。理由を探ってみたところ、なんと北京大学のある中国人学生が「受講席に空きが出た瞬間に自動で受講申し込みを行う24時間対応のソフトフェア」を開発していたことが発覚したんです。すでにそのソフトが学生の間で出回っており、どおりで、手動で残席を確認している私は授業選択ができないはずでした。
その時、中国人の「突破力」というのは、日本人とは比べものにならないと思いました。そして結局、私もソフトフェアには太刀打ちできないと思い、購入しましたよ(笑)ちなみに、そのソフトを開発した学生は、そのまま事業化していました(笑)