人生は消去法、頑張らない起業
株式会社東京梨庵 代表取締役 / 平野由梨子
広告代理店で撮影に立ち会ったりするお仕事のほか、個人のスタイリストさんのWebサイトの運用のアドバイスをさせていただいたりしています。
例えば、個人で長くお仕事をされている実績のあるスタイリストさんほど口コミで仕事をもらっているため、Webに詳しくなく、自分のホームページを持っていない人が多いのです。その一方で、自身のWebサイトを持つことで新しいビジネスチャンスが生まれるのではないかと考えている人は多い。今は簡単にWebサイトを作れる時代になっているため、スタイリストさんの中には自分でサイトを立ち上げる方もいらっしゃるのですが、Webサイトをただ作っただけでは無人島にお店を出しているのと変わりません。Webサイトから売上を上げるためには、サイトを作った後に「いかに多くの人に見に来てもらえるようにするか」が肝心なのですが、私にECやWebサイトを作りたいとご相談されるほとんどの方はそのことを知らないのです。いわゆる集客が重要であり、私が集客について話をすると、皆さん本当に話を良く聞いてくださるのです。デザインやプログラミングといった専門的な部分よりも運営周りの知識でアドバイザーとなっている感じです。私自身がECサイトを立ち上げて学んだ経験が大いに役立っていますね。 この春までの5年間は自分と従業員とお客様のためだけにECサイト運営を行なってきたつもりでしたので、Webの経験が他の誰かの役に立てる日が来るとは夢にも思っていませんでした。(笑)
常に悩みだらけです。(笑)
私はもともと慌て者で気が小さい性格なんです。結果的には良いことで終わっても、その過程では何度も「どうしよう」と焦ってばかりなんですよ。自分の経営が順風満帆だったと思える瞬間は今までに一度もないですね。
例えば取材をしてもらっている今日も焦った出来事があります。(笑)
いつもお世話になっている税理士さんと月例の打ち合わせをしていた時ですが、税理士さんに「ちょっと聞きたいことがあるんですけど…」と言われたんです。私はそれだけで「なんだろう」ってすごいドキッとしてしまったんです。結局その内容は、私の提出した資料の「数字が合わない」というもので、私の計算ミスが原因でした。そもそも、そういったミスのチェックのために税理士さんがいるので、私がドキッとする必要は全く無いはずなんですけどね。私の担当税理士さんは、一緒に飲みにも行く仲良しの女性でもう2年の付き合いになるのですが、それでもドキドキ焦ってしまいました。(笑)
私は経営に対する信念があったり、何か前向きな理由で経営者を続けてこられているわけではないのです。もちろん仕事を通して様々な人に喜んでもらえるのはとても嬉しいですし、やりがいも感じています。でも、私が経営者という立場を選び続けている一番根幹となっている部分の理由は、私が「人に合わせるのが苦手」で、かつ「寂しがり屋」だからだと思います。私が「起業」を選択した当時、私は博士課程に進学するために大学院に通っていました。でも、大学院内は私が思っていた以上に派閥意識が強く、団体行動を強いられました。「人に合わせるのが苦手」な私にとって団体行動の環境で院生として続けていくのに無理を感じるようになったのです。就職活動もしましたが、やっぱり会社員になるという選択肢も腹に落ちませんでした。一方で、今思えばですが、次々に社会人となっていく周りの友人たちと「同じ目線で話ができる自分でありたい」という気持ちが強かったのだと思います。一般的にいうニートやフリーターでも、本人が納得していれば私は全くかまわないと思っているのですが、私自身はそれだと今周りにいるお友達と距離ができてしまう寂しさがたぶんなんとなくあった。その結果、私に残された選択肢は「起業」しかなかったのです。私は常に消去法で人生の選択をしてきたように感じますね。