医師が起業してまで実現したい世界とは
メドピア株式会社 代表取締役/石見 陽
経営者としての勉強はしたことのない状態でのスタートでしたので、数字周りの基礎知識のなさにはずっと苦労していました。また、サラリーマンや社会人経験もなかったので、必要があればその都度本を読んで勉強したり、一番は日々活動しながらOJTで学んでいましたね。今では10年も経営者をやっていますので経営者として知っておかなければならない知識はある程度補完できてはいますが、それでもまだまだ学んでいかなければならないと感じています。
また、チームビルディングはいつになってもテーマであり興味もあるところです。10人社員がいても一人ひとりの意識が向くところがバラバラですと5人分の力しか発揮できません。そのような状況ですと経営者としても辛いですし、人も辞めていきます。実際にそのような状況になったこともあって辛い経験もしました。全員が今取り組んでいることに満足することは難しいかもしれませんが、全員が組織の目的を理解した上で同じ方向に向かって助け合い、力を発揮する環境づくりは常に心がけていかなければならないと思います。私の仕事は具体的にゴールを示してどのようなルートをとっていくのかを設定することだと思っています。
私は社会人経験がなく、経営者としての知識をもともと学んできたわけではありません。しかし、知らない世界だったからこそ型にはまることなくなんでもできると信じて日々精進しています。それと同じ話で、私たちは医療業界に風穴を開けることを目標として存在しているので、一緒に働く人間も医療の型にはまっていない怖いもの知らずな人間の方がいいと思っています。現在会社の中に医師は私一人で、残りの大半は他の業界からやってきています。ただし、会社中には共鳴が重要だと思っています。他の業界ではバリバリ活躍し、明日二億稼いできますというような優秀な人間でも医療に興味がなければ一緒に仕事をすることはできないと思っています。医療をメインで学んできてはいないものの、医療にものすごい関心のある社員というのは医療業界に風穴を開けるにはもってこいの人材だと思っています。
経営者との交流が必然的に多くなりましたが、経営して肝が据わっている人たちと出会う可能性が高くなったことは良かったです。人のせいにして生きている人とはほとんど出会わないですからね。自分で自分の人生を切り拓いている人たちと出会うと刺激を受けますし、そのような出会いがあることは自分の財産だと思っています。
「自分の後ろには誰もいない」ということを意識するようにしています。最終的に何か間違ったときって全部自分のせいなんですよ。もちろんミスをしてしまった人にフィードバックは行いますが、最後の最後は自分が責任を取ること、何が起こっても覚悟を決めて逃げないことを心がけています。
起業は結構ひっそりとしていまして、医学部の人間に起業することを話した時はすでにビジネスに注力すると決めていたので特に騒がれはしませんでした。ただ、親は嫌がっていたと思います。兄も医学部に入り、自分の子どもを両方医学部に入れることができたことに親からするとそれなりに自負はあったはずです。起業すると言ったときは「誰にたぶらかされたのか」と思ったでしょうね。(笑) とはいっても反対したところで無駄であると親も思ったのか、最終的には「やりたいようにしなさい」と言ってくれました。