「どこで」より「なにを」やるか
株式会社アプリボット 代表取締役社長 / 浮田光樹
社長は最終決裁者のため、誰に相談しても良いですし、自分だけで決めてももちろん良いです。最終的に自分で決めたことの結果が全てそのまま周りからの評価となるのが社長のため、その点は社長になる前と大きな違いを感じました。例えば、私が社長に就任した時はアプリボットとしては業績が厳しい時期でした。
「どのプロジェクトを辞めるか」、「どのプロジェクトを伸ばしていくか」、「人員の構成はどうするか」などのあらゆる決定の最終的責任が私個人にありました。
そういった大きな決定を求められる度に、社長という仕事ならではの責任の重さを感じました。取締役の頃は「提言する」という立場だったのですが、社長になってからは「決定する」という立場になりました。社長に就任してからは、立場の違いによる責任の大きさを実感しました。
私の場合、会社経営で不安を感じることは少ないです。性格的な面も大きいと思いますが、不安よりも「上手くいくかもしれない」という気持ちが勝るタイプです。それに「これでダメだったら仕方ない」と思えるくらいまで普段から考え抜いています。だからこそ、経営判断に不安を感じることが少ないのかもしれないですね。
そうですね、不安を消せるだけの行動があれば自然と不安は消えていくものです。しかし、会社経営は自分一人でやるものではありません。
自分が大丈夫だと考えていてもメンバーが不安そうにしていたら、経営はうまくいきません。
社長のリーダーシップも大切ですが、それだけでは社員を不安にさせないためには不十分だと感じています。
私は、社長に就任した当時も、不安がゼロだったとは言えませんが、不安や迷いを感じることなく経営判断を行えていました。それは、社員たちが自主的に一丸となって、会社を立て直すために本気で仕事に取り組んでくれていたからでした。会社のビジョンに共感してくれている人や、会社の文化に合っている人が社内にどれだけ沢山いるかで、社長が自信を持った経営ができるかどうかも決まってくると思います。会社を実際に動かすのは社員なので、社員がいかに会社の方針を信じることができているかは非常に重要になります。会社のビジョンや文化に共感してくれている社員は、社長が指示を出すまでもなく自然と目指すべき方向に動いてくれるものです。
グループ会社の大きなメリットは、グループ会社の連携によるシナジーを生み出せることです。それぞれが異なる事業を行なっているために、他事業の専門的なことをチャット一つで簡単に情報共有ができます。過去の成功事例や失敗事例を経験した当事者に直接聞きに行けるのも大きな魅力ですね。
デメリットは、確実に社長になれる保証がないことではないでしょうか。(笑)
ただし、こういった議論をしてしまうような人はそもそも社長には向いていないように思えます。これは本当に個人的な意見なのですが、私はこういった議論が好きではないです。議論そのものがダメというつもりはありませんが、そういったことを気にしている人は視点が低いと思ってしまいます。「個人起業と社内ベンチャーの立ち上げのどちらを経験するのが自分にとってプラスになるのか」を考えるくらいなら、少しでも「自分が行なう事業」について考えたほうが良いのではないでしょうか。どちらが良いかは、その人次第です。自分の行なう事業について、常に経営者の視点になって考えることが出来ていれば、おそらくどちらでも大した違いはないと思います。
どこで社長になるかより「どんな事業を興すのか」の方が圧倒的に重要です。どうせ考えるなら、ぜひ事業について真剣に考えてほしいです。
もし個人起業かグループ会社の社長のどちらになるか迷うようなことがあれば、その時のフィーリングで選べば良いのです。