「偶然」を「察する」力=「偶察力」
株式会社東京片岡英彦事務所 代表取締役 一般社団法人 日本アドボカシー協会 代表理事 世界の医療団(認定NPO法人)広報マネージャー / 片岡英彦
そのつもりで、ベルリンの話をしました。キャリアプランを正確に描いてみても、その通りにいかない方が多い。でも本当はその方が良かったりするんです。僕がツアーでベルリンに行っていたらまずベルリンでピカソ展には行かないですよね。たまたま、ピカソの絵を見て、たまたまタクシー運転手に聞いて、たまたま入ったらフェルメールの絵にも出会えた。フェルメールの絵は世界に30枚ほどしか残っていないはずです。日本で展覧会を開いたら終日大行列ができます。そんな絵が何気なく、美術館の隅っこに2枚飾ってあった。あとはその2枚の絵に気付くかどうか。フェルメールの絵の価値を知っていて気が付くかどうかです。 科学者とか研究者は実験をやって失敗するけど、その結果掴むことがあるじゃないですか。成功していたら掴めなかったもっと大きな成功が失敗の中から気づくことが「偶察力」です。
日頃から考え続けること、観察し続けることだと思います。街中を歩いていたら他にも見るところはたくさんあります。ピカソの絵を知っていたのでピカソのポスターだと気付きました。言葉の通じないタクシーの運転手にポスターの写真を見せれば連れて行ってもらえるだろうことも知っていました。見逃してしまうかもしれなかったフェルメールの絵も知っていたので、隅っこに飾ってあっても気付くことができたんです。
まずは「セレンディピテー(偶察力)ですね。あとは「共時性」(シンクロニシティ)という言葉があります。これは自分が思いついたアイディアは近くの人も同じタイミングでひらめくことがあるんです。共通した知識を持っている人ほど多い傾向があります。この2つを大切にしています。なるべく思ったことは人に言います。すると、私もそう思っていたと「共時性」が起こって協力してくれたりすることがよくあります。
何もしないなら何もしないことを徹底した方がいい。何かしないといけないと思って、何かをするのはかっこ悪いと思っています。危機感でやることって大概は本当にやりたいことではないんですよ。逆に大学4年間籠っていたら何かやりたくなりますよ。周りに合わせても周りが正しいとは限りません。「自分の好きな事」「人のやらないこと」「社会が必要とすること」この3つが満たされることをすれば、大抵失敗はしないです。
単位を取る為の勉強はしていなかったです。興味のある授業を受けて難しい経済学や社会学の原書とかを授業とは関係なく読んでいました。勉強はしていましたが、授業にはあまり出ませんでした。特別なことは何もしてなかったです。何もすることが思いつかなかったんです。周りは資格を取っている人が多かったんですけども、そうした堅い仕事は似合わないと思っていました。
ある日、ママチャリに乗って京都から藤沢まで帰省することにしたんです。ダメなら途中で自転車捨ててしまおうと思って。そして、意外に一日で四日市まで行けたんです。しかし、旅の途中でパンクしてしまって・・・自転車屋さんなんてありませんでした。そうしたら通り道にガラス屋さんを見つけたので行ってみたんです。ガラスを切る際に空気を使うことを知っていたので、自転車屋さんはなくてもガラス屋さんに、違う空気入れを借りられました。これも「偶察力」ですよね。(笑)
ヨーロッパに行った際には、最初ロンドンに行ったのですが、だんだんお金が無くなっていったんです。南の方が物価は安いのでパリから電車で南下してポルトガルまで行って、そこで帰りの便に必要なお金以外はなくなったので身動きがとれなくなりました。労働ビザもないので働けません・・・ギリギリまでお金を使ってしまい、成田に着いた時にはお財布に500円しか残ってなかったのは今でも覚えています。
命さえ取られなければ何とかなるじゃないですか。江戸時代の時は何かあったら切腹しなくてはなりませんよね。そんなことがつい200年前くらいまで日本で普通に行われていたんですよ。明治維新も太平洋戦争中もそうです。みんな命をかけて生きてきた。そういう意味では今はとても幸せな時代だと思います。命まで取られる失敗はまずないはずです。
夢を見つけようと頑張った時点で、それって「夢」じゃないですよ。自分で自分を強制してしまっている。夢をみる権利はあっても義務はありません。AかBかどっちか。という考えが好きではなくて、A,BだけではなくCもDもEもいくらでも他の選択肢があると思います。
日テレでは、日テレの番組しかPRできないですよね。特に他局のテレビ番組で日テレの番組をPRすることは無理です。一方MTVは有料のテレビなので番組宣伝以前に、加入促進活動が必要なんです。そこが地上波とは違う点です。 ただし、基本的にはネット企業ではなく、テレビ(マスコミュニケーション)でした。AppleはメルマガやWebなどダイレクトマーケティングを行いました。顧客に向けてどういった手法で、どういうメッセージを伝えるのか、そういった違いがそれぞれありました。一方、マクドナルドでは全国に店舗があります。店舗は最大の「メディア」でもあります。メディア企業の行う情報発信とは違う顧客とのコミュニケーションが必要なんです。一方で、ソーシャルメディアが登場し、mixiという会社に入りました。マーケティングやコミュニケーションといっても会社によって求められる仕事は大きく違うんです。今は、NGOでのコミュニケーション活動を行っています。NGOの場合は寄附を頂く「その方」に対して直接、商品などを提供してないですよね。寄付金を貰うのに対して我々は直接渡すものはありません。ある意味、究極のコミュニケーションです。どうしたら寄付を集められるのか考え続けています。また社会に今伝えるべきメッセージが何か24時間考えています。
「自分が好きな事」「人がやらないこと」「社会が必要としていること」を軸にしています。この考えに賛同してくれる、多くのクライアントや仲間たちが応援してくれています。
たぶん、好きなことを継続していたら得意になります。得意なものも継続していれば好きになりますよ。数学が嫌いでも、100点を取り続けていれば好きになるじゃないですか。人間は得意であれば好きになります。 社会が必要としているかどうかを認識することが一番難しいです。本当にニーズがあるのかどうかは試行錯誤してみないと最終的には分かりません。
「空気を読む」という言葉は好きじゃないんですが、「風を読む」ということは大切だと思います。人に何でも同調してしまうと「人のやらないこと」はできません。「空気」ではなく「風を読む」べきです。
机をふけって言われた時に、現在の空気を読んで「一生懸命ふく」のと、将来への風を読んで「ピカピカにふく」というのは違うと思います。そこで差別化が生まれます。人がただ「一生懸命」ふくところを、何回もふいてピカピカに磨けばいいだけです。特別難しいことではないんです。あとは、そこまでできるかどうか、やるかどうかだけの違いです。