レールを外れる勇気を持とう!
グリンバード新宿 代表 / 乙武 洋匡
1976年、東京都生まれ。大学在学中に出版した『五体不満足』がベストセラーに。卒業後はスポーツライターとして活躍。その後、教育に強い関心を抱き、新宿区教育委員会非常勤職員「子どもの生き方パートナー」、杉並区立杉並第四小学校教諭を経て、2013年2月には東京都教育委員に就任。教員時代の経験をもとに書いた初の小説『だいじょうぶ3組』は映画化され、自身も出演。続編小説『ありがとう3組』も刊行された。おもな著書に『だから、僕は学校へ行く!』、『オトことば。』、『オトタケ先生の3つの授業』など。2014年4月には、地域密着を目指すゴミ拾いNPO「グリーンバード新宿」を立ち上げ、代表に就任する。二児の父。
2007年からの三年間、都内の公立小学校で教員を務めていたこともあり、教育についての講演活動や執筆活動を行っています。また、昨年2月には東京都教育委員に就任し、東京都の教育について議論する役割を担っています。他には都内で保育園の運営に携わったり、今年4月には「グリーンバード新宿」というボランティア団体を立ち上げ、地域の方々とともに区内の清掃活動を行ったりしています。
たしかに、そうかもしれません。しかし、教育というのは「学校」「家庭」「地域」の三つによって成り立っています。そうした意味で、地域の方々と行うグリンバードによる清掃活動は、あらためて「地域教育」について考える、いい機会となっていると感じています。
そうですね。先程もお話ししたように、教育は「学校」「家庭」「地域」の三つによって支えられています。学校教育については、小学校教員としての経験や東京都教育委員としての活動を通して、ある程度は理解できている。また、いまは二児の父、しかも長男は小学生ということもあり、家庭教育においては当事者だと言える。ただ、地域に関してはあまりチャンネルが持てていなかったんです。だから、どうにかして地域社会と関わっていきたいという思いがありました。
ただ、グリーンバードを立ち上げた理由は、それだけではありません。今年2月、都内が記録的な大雪に見舞われたことを覚えていますか。私には都内でひとり暮らしをする母がいるのですが、やはり雪かきにはかなり苦労させられたそうなんです。母はまだ若いので今回は何とかなりましたが、これはうちの問題だけではないなと感じたんです。新宿区内もかなり高齢化が進んでいます。高齢者の単身世帯も増えてきています。そうした人々は、おそらく大変な状況だったのではないか、と。これはもう大雪が降ったときだけではありませんよね。災害時も同じです。地方の“顔の見えるまち”であれば、いざ災害が起こっても、「あそこのおばあちゃん大丈夫かな。あの家には車椅子の人が住んでいるはずだけど、見に行ったほうがいいかな」と助け合いの関係が生まれますよね。ところが、都心部では「となりに誰が住んでいるかさえわからない」という状況が当たり前。地域の関係性が非常に希薄ですよね。それでは助け合いも生まれにくい。高齢者や障害者は、完全に孤立してしまう。それを防ぐためにも、日頃から地域住民が顔を合わせる場作りが必要なのではないかと感じたんです。
グリンバードは、2003年に「きれいな街は、人の心もきれいにする」をコンセプトに誕生した原宿・表参道発信のプロジェクト。この11年間でどんどん拡大し、いまでは60近い地域で行われるようになりました。私が代表を務める「新宿チーム」は57番目のチームで、今年の4月に発足したばかり。小さなお子さんや子育て世代、学生さんや高齢者など年齢層も幅広いですし、さらには外国人留学生や路上生活者の方々も参加してくださるなど、本当に多様な人々が集まるコミュニティとなっているんです。ごみ拾いを通して街をきれいにすることはもちろんですが、普段の生活では接することのない属性の人々と交流する楽しさを感じてもらえたらいいですね。