そもそも企業や会社は、社会がないと成立しない
株式会社リバースプロジェクト / 龜石太夏匡part1
もともと、私自身が洋服屋をやっていた経験があり、量産して残った服は、廃棄処分されてしまうことを知っていました。私の経営していた小さなお店でも多くの廃棄が出ていたので、これが大手の場合、どの位の量になるのかと気になり、実際にアパレル関係の人と話したこともありました。現場レベルだと、皆さんもったいないと言っています。
でも、ブランドイメージ等のさまざまな要因で、プロジェクトが成立するのは難しかったですね。そんな中、デニムメーカーのLeeの代表の方は、興味を持ってくださいました。Leeは、会社自体がサスティナブルな活動を行っていたことも奇遇でした。廃棄してしまうデニムを工場からもう一度戻して、我々のクリエイターがグラフィックを施して、もう一度市場に出しました。今まで燃やされていた物が、市場に出て、その売上金の一部を環境改善に使いました。そうすると、ゴミになっていた物から環境改善に繋がるという一つのシステムができたんですね。ただ、リユースだと売れ残ったものなので、サイズや色がなかったことが、欠点でした。だからなかなか自分に合ったものを見つけにくかったんですが、完売はしました。
サードシーズンから思考を変えて、取り組みました。サードでは、例えばベルリンの壁が崩壊した年の生地なら、ベルリンをテーマにグラフィック施す。デッドストック・ファブリックという新しい形のデッドストックを考案しました。
私が20代のころにやっていたパイドパイパーでは自分たちが着たい服を作っていました。その店は、1度クローズしたんですが、今回リバースプロジェクトで復活させて、パイドパイパーリバースプロジェクトというブランドを立ち上げました。今回は立ち上げるに当たり、2つテーマ決めて洋服を作ったんです。1つは「エシカル素材を中心に洋服を作る」。もう1つは、「国内生産に特化する」ことでした。
我々はコットンがどう栽培されているのか、安い洋服がどんな背景で作られているのかを知らなくてはならない。そういったことを知ると、我々がエシカル素材を使っていくことは至極当たり前なことだと理解してもらえるはずです。
日本のように資源も食料もない国の財産は、人だと思い、我々は国内の技術はしっかりと受け継がれるべきだと考えました。日本は技術や生産能力が高いのになぜ、海外で作られるのか。それは安く作りたいからですよね。すると国内では雇用等のさまざまな影響が出てきます。ビジネスという観点から見れば、安く作って高く売れれば利益率は高くて良いというのは当たり前です。それが、良いか悪いか我々は否定も肯定もしない。安いものが悪いわけじゃないですからね。ただ、僕らは選択できる状況を作らないといけない。我々は、国内の素晴らしい技術や伝統を使った製品を選択肢として作りたいんです。
国内にはすばらしい素材も伝統もあって、これらをきちんとファッションに落とし込んで、我々が良いと思う物にしたいという気持ちがあります。別に使命感だけでやっている訳ではありません。
単にデザインがいいとか、ブランドだからという理由だけで、かっこいいとは思えない。その製品はどんな背景や理念で誕生したのかってことを考えてほしいですね。そういうことに意識を向けている人は、増えてきていると思いますよ。