昨日より今日、今日より明日
ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役社長 / 山田敏夫
僕は、IT企業に入ったことが、通販サイトを運営することにつながるなんて考えもしませんでした。そんな風に過去と現在の経験をつなげるのはただの後付けです。「IT企業で営業を学び、ファッション通販企業で通販のノウハウを学び、そこから起業をした」と、綺麗にまとめられるような話じゃないと思います。そういう風に表面的な見方をしてしまうと、本質は見えてきません。
本質というのは、成功する上で必要な、根本的な考え方のことです。僕にとっての本質は、「毎日1日1mmの改善」をするということです。「昨日より今日、今日より明日をよくしていく」という徹底的に地味な作業をすること以外に、自分を成長させ、成功する術はありません。新しい環境に飛び込む勇気や、がむしゃらに頑張る胆力、諦めないこと、周りへの感謝などといった、当たり前のことこそがめちゃくちゃ大事なんです。
僕はヒューマンキャピタルで営業部長になった後、アパレル通販サイトを運営する「fashionwalker.com」という会社で働き出したのですが、その時は倉庫のアルバイトから始めたんです。だけど、そこからとにかく地道にがむしゃらに努力をして、最終的には本社で働かせてもらえるようになりました。その経験から言えるのは、仕事において大事なのは、それまでのキャリアではなく、「自分が望む時に丸腰でそこに入っていけるか」だと思います。正直、これだけ時代がハイスピードで動いているなか、自分が今持っている力というのはあてになりません。今自分が持っている力よりも大事なのは、「それをやりたい」と思える胆力や、そこに踏み込める勇気なんです。
心からやりたいと思えることを見つけるのは難しいし、時間がかかります。だけど、いつか絶対に見つかるから、そこで焦る必要は無いと思うんです。僕は、人間の心の中にはそれぞれ「沸点」があると考えています。人は、人生において様々な経験をする中で、憤りや喜び、悲しみなどの感情を感じていきます。そこでどんどん自分の中の「温度」が上がっていき、ある段階で自分の中の「沸点」を超えることで、何か大きな行動に踏み切ることができると思うのです。僕はその「沸点」を超え、起業をしたのが29歳の時です。その時に迷わずまっすぐ行動を起こすことができたから、今のFactelierがあります。だから、「やりたいことがない」と言って焦るのではなくて、「沸点を超えた時にどう行動に移せるか」ということが重要だと思います。
僕は、情報発信を強く意識しているわけではありません。ただ、「僕たちがどんな会社で、どんな価値を提供しているのか」ということは積極的に伝えるようにはしていますね。例えば、300年もの歴史を持つ天然工房の醤油をお客様に紹介したり、地ビールの蔵元を呼んで、上質なビールが飲み比べできるイベントを開催したり。また、虎屋の17代目当主である黒川光博さんや、放送作家の小山薫堂さんなどとの対談インタビューも行っています。このような、上質なサービスを提供している会社や人とお話しさせていただくことで、僕たち自身の立ち位置を明確にするんです。つまり、僕たちが「上質な体験」や「豊かな時間」を提供する会社でありたいと思っているので、対談させていただき情報発信をしています。