アスリートを無限のフィールドへ
一般社団法人アスリートソサエティ / 為末大
本当に様々な人にお会いして、お話を伺いました。色んなスポーツ選手がいらっしゃいますが、僕が一番多くの人との関わりを持っていると思います。政治家、コンサルタント、飲食業者、ファッション、色んな分野で活躍している人にお会いしました。スポーツの世界の中でも、この社団を始めて、プロスポーツから、マイナースポーツまで、ありとあらゆるスポーツをされている方々にも会いました。いろいろな世界にはいろいろな常識があります。自分の常識っていうのは、他の世界では常識ではないんです。多くの世界にいる人にお話を聞き、学んで生きていくというのは本当にいいことだと思いますよ。
理想を言うと、日本のオリンピアンの半分以上が登録して、選手たちが活躍できる場所を提供して行こうと思っています。
例えば今回の震災の時 、選手が集合して、一気に支援をして行こうと思っても、それをやる団体はないんですね。現時点で日本の団体は、スポーツ能力の強化団体でしかないんです。はっきり言って、強くなる事を目的にする以外に選手が集まる場所がないんです。そういう団体がないから、被災地支援をスポーツ界としてしようとしても、動きが遅くなってしまったりするんです。スポーツ界が同じ方向に動けるような、組織になっていけたら良いなと思っております。
今、会社を自分で立ち上げています。その会社とアスリートソサエティが主なものです。 この会社は、簡単にいえばスポーツ界の産業というもののマネジメントです。石川遼君がCMに出て、そのうちの何パーセントかをコンサルティング料として頂くというビジネスモデルですね。スポーツメーカーや、大会を運営する側、野球チームの運営、そのようなことがスポーツの産業の中の大きな流れだと思います。しかし、マネジメントという部分に、最近すごく限界を感じています。というのは、日本のスポーツ選手というものは、石川遼君と浅田真央ちゃん、イチローさんがいればだいたい事が足りてしまう構造になっているんです。残りの余ったビジネスチャンスを僕らが取りに行くという構図になっているんです。そうすると、景気が悪くなったとき彼らの仕事はなかなか削られないけど、それ以外のビジネスは切られてしまうんです。そうすると、スポーツ選手は食べていけなくなるというのが問題です。その実態がいい悪いではないんですが、現在はスポーツ選手がタレント的な存在になった方が儲かるんです。簡単に言うと、スポーツで名前を売ったあとは、テレビに多く出て、有名になったほうがCMなどにも使われやすく、稼いでいける道を見つけやすいんです。 そこで、スポーツから得るものだけで、引退後も稼いでいくにはどのような事をすれば良いのかずっと考えてきました。口下手な選手も沢山いて、みんながみんな、タレントになれるわけではないんです。だけど、そういう選手も素晴らしい物を持っているんです。そのような選手に引退後も勝機をもたらすにはどのようにすればいいのか、ということを考えていて、このことが会社を起こす原動力になったんです。具体的な業務で言いますと、スポーツ界におけるコンサルティング、人材育成というビジネスです。そして、スポーツの要素が取り入れられそうな産業に、会社と手を組んで取り組んでいきます。
やっぱり、助手席にいるよりは運転席のほうが面白いですからね。それが一番大きいと思います。助手席にいては絶対理解出来ないことが、ハンドリングをしてる側はわかるんですね。そういう面白さがあると思います。例えば、どこまで考えてもグランドで走る選手の感覚は、グランドの周りで見ている人にはわからないんですね。コントロールしている人にしかわからない事がたくさんあるんです。究極のところ、みんなが経営者的な視点に立てることが一番なんだと思うんですが、それは難しいことで、最後で責任を取るのは自分なんですね。そういう責任を持ち、腹を決める所から見える風景はやっぱり、リアルで、学びも多いと思います。なかなか得られないものを手に入れることができるんだと思います。ぼんやりと眺めている風景よりかは、自分でハンドルを握って、緊張感をもち見ている風景は違います。それが好きな人は、面白いんじゃないかなと思います。