シェアハウスというライフスタイル、文化を普及させていく
東京シェアハウス合同会社 / 森山哲郎
敷金、礼金もなく、生活に必要な家電や設備が事前に備わっているので引っ越しの際の初期費用を抑えることができる、共有設備を皆でシェアすることで、家賃を抑えることができるなど、経済的な理由は大きいと思います。 また、ITの発達により、生活に必要な情報収集などは圧倒的に便利になりましたが、日々の暮らしの中でコミュニケーションをとる機会は格段に減っているように感じます。ですので、現実社会でのつながりを求めている人が増えている事も要因の一つではないでしょうか。
僕らのサイトでいうと、海外からのアクセスは顕著に増えてきています。外国人の方だけでなく、日本に帰国予定の方にも多く活用頂いていて、そういう意味では、敷金、礼金や保証人などが不要という手軽さや、現地の人と一緒に暮らせるという安心感はグローバルな舞台で活動したい人にとって、魅力的に映るのではないかと思います。 経済的負担が理由で自分の目標に向かうことができないというのは非常に勿体無いですし、現地にいる人と一緒に暮らすことで、ローカルの情報を収集しやすい、交流の輪が広がりやすいということも、今後は大きなメリットになってくると思います。
苦労した時期は当然ありましたが、振り返って考えてみると、壁にぶつかっても、課題を克服してきた経験が成長の糧になっているとも感じています。特別にこれだけが苦しかった、というのは思い浮かばないですが、ユーザーやシェアハウスの運営者さんなど。関係する人の立場にたって物事を考えるということと、事業を継続させていく上で、お金の流れには神経を使いました。
起業だけにこだわっていた訳ではないのですが、いずれは出来たらいいなと思っていました。でも、それほど固執していた訳でもないし、それよりも社会に大きなインパクトを与えるような事がしたい、という視点だったと思います。起業前は自動車の輸入会社でマーケティングの仕事に携わっていたので、シェアする暮らしを普及させる仕事をしたいと会社で言っても、会社で採用される訳ありませんよね、どちらかというと、起業するしか選択肢が無かったので、起業したという感じです。
どの国にも、良い面と悪い面、長所や短所があると思います。なので、どの国の文化が良いというよりは、旅を継続してきたことが良かったと考えています。例えば、一つの場所で称賛されているものが、別の場所では批判の対象であったり、同じものを異なる立場で眺めると違う捉え方をされるんだということを体験できたことは貴重でした。戦争の英雄は別の場所では大虐殺の主犯だったり、効率性の追求は企業や株主に利益をもたらすかもしれないけど、同時に多くの雇用を奪うことでもあるわけですよね。 あとは、先進国や新興国、発展途上国などを訪問することで時間軸を肌で感じることができたり、歴史観、世界観が養うことができたと考えています。また、日本を離れたからこそ、日本の良さにもたくさん気づくことができたと思います。日本人だから、法的な手続きがしやすいという事もありますが、起業するなら日本の方がやりやすいとも感じています。
事業を展開し始めたとき、同じようなサービスを考えていた人は沢山いたそうです。でも、殆どの人は利益優先で、どんな物件でも構わず掲載していたり、誇大広告でもなりふり構わずという体制だったのに対して、私の場合は一件、一件自分で運営者さんに訪問して、安心、安全で快適に暮らせるというシェアハウスに基準を設けて活動していくという事を説明した上で、営業活動をしていました。ウェブ業界の人からすると非効率的に思われると思いますが、結果的にはユーザーの方に一定の安心感を持ってサイトを活用頂けるイントになったのではないかなと思います。ユーザーや運営者さんにとって使い勝手の良いサイトにしたいと、サイトの構成にはこだわりましたが、後は特別に大きな差別化要素やノウハウがあったとは思いません。一つ一つの物件を実際に訪問し、撮影し画像を補正して記事を掲載するといった地味な作業の積み重ねがあったからこそ、事業方針やサイトの裏側のエラーを修正する事ができたし、運営者さんが他の運営者さんを紹介頂きネットワークも広がったし、サイトの構成や機能についても色んなアドバイスも貰うことができて、サイトの改善や向上につながったと思います。
僕自身はシェアする暮らしというのは確実にライフスタイルの一つとして定着すると思いますし、シェアハウスは社会の縮図的要素があるというか、コミュニティ構築の基盤を担える可能性があると感じていますので普及させるべきだとも考えています。海外のように生活をシェアする感覚で増えるかという問いに対してですが、海外の場合は友人同士でアパートを共同で借りるケースが多いのに対して、日本の場合は事業として展開するシェアハウスの運営者さんがいるというスタイルで普及していくと思います。というのは、日本の場合は、一般の物件を借りる場合にも、やはり敷金、礼金という概念があったりして、友人同士で借りていて、誰かが退去した場合に、別の入居者を探す際に責任者のリスクが非常に高い。ですので、日本の場合は、事業としてシェアハウスを営む運営者さんがいて、より多くの方に入居してもらうために、より充実した共有設備を設けたり、コンセプトを持ったシェアハウスを展開したりと、海外と比較しても独自の路線で普及すると感じています。将来的には、日本のシェアハウスという文化を海外展開する事業者さんも増えていくのではないかなとも感じています。