シェフの社会的地位の向上を目指す
株式会社シェフズバンク / 桑原 大輔
飲食店を自分の手でプロデュースしたいと思うようになったからですね。「作り上げる」というとそれまでの僕はデザインとかカタチになるものを生み出す事だと思っていたんです。
だけど、実は飲食店は人間の五感「視覚・聴覚・味覚・触覚・嗅覚」に訴えかける事ができるし、更に言えば三大欲求の1つで、一生無くなるものではない。
また、シチュエーションによっては一生その人のメモリーになる。プロポーズしたレストランは一生忘れませんよね?そういう場をもし自分の手で作り上げる事ができたら・・・って考えると、凄い事だと思いませんか?
この時、飲食店ってとんでもなく素晴らしいという事に気付いたんです。これってもしかして僕が今までやりたかった事がなんじゃないか?って。それが一番の要因です。
140年くらいの歴史を持っている、日本で初めてしゃぶしゃぶ・すき焼きをはじめた会社です。渋谷パルコのレストランフロアのとある店舗からスタートしました。
入社後3ヶ月で店長に昇進しました。そこで2年間店舗の運営や経営などのマネジメントを勉強しました。また会社自体の企画部門にも関わり、 Photoshopやillustratorを使って、独自にメニューを制作したんです。成果としては、2年後に売り上げを20%上げる事ができました。 当時凄く調子に乗ってしまって、早く次のステップに行きたくて仕方ありませんでした。
そんな時にパルコのレストランフロアを一新するという話が出たんです。私の店はフロア内で一番売り上げが良かったので、新しいコンセプトのお店を出して 欲しいというお話を頂きました。そこで念願の店舗プロデュースの担当責任者に就任しました。これが人生初めての店舗プロデュースです。
大失敗でした。「店を作りたい」という思いだけでスキルがゼロだったんです。生意気だったんで、交渉の仕方が全く分からず、駆け引きの仕方も分からない。 どういう行程を踏まなければいけないか、スケジューリングも全く分からない。何とかオープンしたのですが、ミスだらけ。料理が出ない上にテーブルチェック のシステムが全然機能せず、お会計でお客様を1時間も待たせてしまっていたりしました。
当時は気付かなかったのですが、オープニングにはオープニングのノウハウが必要だったんです。何が何だか分からずに、前の店舗で20%の売り上げを上げ たという自信も全て打ち砕かれましたね。料理長は「今日で辞める」と言い出す日もありましたし、本気で悔しい思いをしました。
ただ、負けるわけには行かなかったので、2ヶ月目から何とか軌道に乗せました。店舗プロデュースを完璧にする為には、もっともっと経験をする必要があると痛感しましたね。
例の部長さんが今度は大手外食産業にいらっしゃったんです。そこで和食事業部を立ち上げるという話があり、僕を担当責任者として使いたいというお話を頂きました。それで転職決めました。
しかしまずは社内での信用を勝ち取らなければいけないので、白金の中華料理店を担当し、当時はほとんど知られていなかったネットでの販促を駆使して店舗の売り上げを20%上げました。結果を出して、社内からの信頼を勝ち取り、和食事業部に移動をしました。
部長さんと協力して表参道にふぐ料理店を出店しました。前回の経験があったので、オープニングまでは順調だったんです。 ただし、その後は売り上げが全然伸びなかった。会社の会長に呼び出されて、2ヶ月後までに立て直さなければ店を潰すと宣告されてしまいました。寝れない日々が続きましたね。
状況を打開する為にメディアを上手に使いました。当時「東京カレンダー」という雑誌に取り上げられる事が一番のステータスだったので、「東京カレン ダー」に掲載をしていただきプロモーション戦略を図りました。結果として多くのメディアに取り上げて頂き、売り上げを2倍に伸ばす人気店に成長を遂げる事 ができました。
逆に地獄だったんです。数週間先まで毎日満席で、とにかく大変でした。毎日深夜2時までスタッフ達とへとへとになりながら働いて、いつも始発で帰宅。どんどんと疲弊していきました。
そんな辛い時期にふと初心に返ったんです。自分が飲食店に携わってきたのは、飲食店を創造したい、という一心だった。今まで店舗運営の責任者として何店 かまわってきて店舗を運営してきた。だけど、内側からだけ物を見ているだけで本当に正しいのか?もっと外側から見るものがあるのでは?と自問自答を重ねる ようになったんです。
もっと色んな企画を出して、店舗をプロデュースして修行したい。そんな風に考えるようになりました。 結局誘って頂いたにも関わらず1年で転職を決意します。そしてその後某インテリアデザイン事務所に入社をします。
募集要綱が「飲食店経験者」「プロデュース経験者」「プロジェクトマネージャー募集」というものだったんですよ。まさに自分の事じゃないか!と。実際、そ のインテリアデザイン事務所は某上場外食企業の企画とデザイン設計を請け負っていて、飲食店のデザインをずっと行っていたんです。
そのトータルのプロデュースとマネジメントを自分が担当しました。また3年目でフードプロデュース室を作って頂き、室長に就任しました。
リックデザイン在籍時は5年間で約350件の案件を担当しました。どこの立地にどういうお店を作ったら良いのか、今度はコンセプト作りから始める作業です。毎日毎日プレゼンで、本当に辛かったですね。