シェフの社会的地位の向上を目指す
株式会社シェフズバンク / 桑原 大輔
非常に勉強になりましたね。企画サイドと運営サイドの価値観の対立とか、難しい問題にも直面しました。
企画側はコンセプトを軸にします。どういうサービス、店員、テーブル、メニュー等細かくコンセプトに沿って決定し、それが一つのお店の空気感を生み出す んです。でも運営側にはその事が伝わっていない事が多い。毎日毎日人が代わり、カラーが変わる。しまいには料理人が自分の作りたい料理を作ってしまう。そ ういうのがダメになってしまうお店なんですよ。その店が存在する理由=コンセプト通りに運営すれば大体は上手くいくんです。
ただ、運営側からしたら理想ばかり掲げられても困るんですよ。日々業務をこなしていくのは運営なんですから。
いえ、違います。1人でやっていける能力がついたからですね。
室長に就任してから会社経営者の方々と会議をするようになりました。だけど会議の場で末席の自分は発言をする事が許されなかった。だけど自分の意見を言 えなかったとしても、頭の中で勝手に仮定を出す事ができますよね。3年間、企画が上がる度に成功するか失敗するか自分でシュミレーションを繰り返しまし た。最終的には自分の仮定がほぼ合うようになり、自分に力がついたと判断したんです。
当時31歳で運営面でも企画面でも、僕と同等の力を持った人は少ないだろうと。そう考えて独立をしました。
個人事業主の形態を取りフリーランスでやっていました。前の会社で非常に多忙な生活を送っていたので、リハビリも兼ねてのんびりやっていました。
前職を辞める前に幾つかアイディアを抱えており、IID世田谷ものづくり学校のレストラン学部に行ったんです。その時に個人プレゼンを行って、現在の「シェフズバンク」という発想をプレゼンした所、先生から「やってみればいい」と。
もう一つの「クラヤミ食堂」は海外にブラインドレストランというものがあるという事を紹介したら、その事に興味を持った博報堂のこどもごころ製作所の山本さんと知り合うようになり、後に実現化するようになりました。
発想としては毎月毎月シェフが変わっていき、シェフが変わる事により毎月新しい料理を食べられる、という事が原点です。
+αで言えば、外食産業のスカウトとの間でマッチングできる場所として提供できる事ですね。外食業界は優秀はシェフを求めているんです。またシェフも良 い就職先を求めているのに中々マッチングが起きないんです。そこに問題意識を感じていて、ここを何とかできないかと思いました。
そこでお客様にもスカウトマンにもなっていただき、美味しいとか素晴らしいと思って貰えると、シェフズバンクを通してジョブ・マッチングが始まる、という仕組みですね。
ただそれだけでは、ビジネスマッチングだけになる。あまり面白いものではないので、なにかそれに+αを加えないと・・・。そこで生まれた発想は、「一般 のお客様に参加してもらう」「一緒にプロジェクトを創り上げる」という事です。最近は一般のお客様も素晴らしい意見や知識を持っている。だったら、その一 般のお客様を巻き込んだビジネスをすればいい、ということです。
例えばお笑い芸人は一般の人達が評価するじゃないですか。でもシェフはプロが評価しますよね。B to Cの商売なのに何でB to Bの人だけが見ているんだと疑問に思いませんか。もっともっと一般の人達を巻き込んで、一般の人達に評価をして貰う必要があると思っています。その為の仕 掛けが現在の「値決め食堂」や「値決めレストラン」です
約3年かかりました。我々は企画とノウハウはあったのですが、お金と場所がない。そんな時にテーブルスタジオ・タキトーの瀧藤久夫さんからお話を頂いたんです。そこで「値決め食堂」や「値決めレストラン」を始めた所、それがメディアの注目を異常に浴びるようになり、ちゃんと組織化しなければという事で2010年の3月に設立をしました。だから起業は完全に手段の一つという感じでした。
シェフズバンクの目的はシェフの社会的地位/職業的地位の向上です。まずシェフ達が私達のシェフズバンクにチャレン ジしていただいて、まず自分のお店を持って貰う事を第一の通過点としています。その後、私たちシェフズバンクと協力して繁盛させる。ただ、自分の店を持つ だけではシェフが1000万とか2000万の年収は貰えません。その為に1つ目はPB事業を考えています。シェフがそれぞれのPBを作り、その売り上げを 還元するような仕組みを作りたいですね。
そうする事で、シェフという職業が社会的に魅力を持つ様になれば、5年後10年後に東大卒のシェフ、ハーバード卒のシェフが出てくる時代になります。
もう1つは「値決めレストラン」や「値決め食堂」を全国に設けたいです。そうすれば、全国各地で、自分の腕を挑戦できることになります。立地によってお 客様の層とか、何を求めているかとか違いますよね。地元で店を開きたいのに、修行の為にわざわざ東京に出てくる。その後、地元にもどってレストランを開業 する。しかし、その土地のマーケットがわからない。せっかく、技術は身に付いたのに、商売ができない。それって、悲しいと思いませんか?シェフズバンクは そのような、道理に合っていない部分をプロデュースできるようなソフト集団になりたいですね。
いずれは、その中から三つ星レストランが生まれる。そうすれば地方の活性化にも繋がりますよね。
人と人とがコミュニケーションをする為のツールです。生きるために食べる、という時代は終わったと思っています。「食」は、コミュニケーションを取る為のツールで、その場を提供しているのが「レストランであり飲食店」であると感じています。
自分が正しいと思った事をやって欲しいですね。価値観も多様化している世の中ですから、自分の思った事を悔いの無いようにやって下さい。