伝統産業を守り、長く愛される会社をつくる
株式会社 伝統デザイン工房設立 / 高橋 万太郎
業者さんたちと僕との関係が一取引先ではなくなった事ですね。つまり、取引先以上の関係性を築く事ができたと思います。どういう事かと言うと、業者さん側としては100mlサイズの醤油が広まるほど知名度が上がり購入するお客様も増えるので、僕の仕事をとても応援してくれるようになったんです。こだわりの醤油業者さんって全国数少ないですがその半分以上とはコンタクトを取っているので、これほどの信頼関係があれば大手企業さんが新規参入しようとしてもなかなかできないと思いますね。
偉大な先輩起業家の方々とは比にならない存在だと思いますが、順調と言えば順調ですね。在庫として抱えているものもあるんですが、取り扱い店さんには小ロットで対応して頂いているので大量に在庫を抱える心配はあまりないんです。ホームページの編集なども自分たちでやっているのでキャッシュフローとしての支出が少ないんですよ。
伝統産業、地域産業の作り手と消費者、地域の若者との距離がもっと縮まる事が僕の理想です。ですから、それを実現できるような組織に成長させたいと考えていますね。具体的にはまず全国すべての醤油業者の方と仲間になる事が短期的な目標です。
次の段階としてはまず醤油と近い存在である味噌の展開をしたいと考えています。取引先の醤油業者さんのネットワークがあれば広げる事ができると思うんです。商材を広げていく中で若い方が集まってくれれば今度は地域として組織を作る事ができると思うので、その地域出身の方が地元に戻り地域産業を盛り上げてくれる事が理想ですね。その理想の実現の為にもまずは今展開している醤油で足場を固めたいと思っています。
辛かった事といえば、やっぱり金銭面くらいですね。最初の頃は売り上げがゼロに等しいので通帳の貯金残高が減る一方でした。ただそれはどの起業家の方にも共通する事ですので、それ以外特筆して辛かった事はないですね。
反対に良かった事は会社の看板を抜きにお付き合いできる人が増えた事です。現在お付き合いしている醤油業者さんとは一生の付き合いになると感じているんですが、普通にサラリーマンとして働いていたらそういう事はないと思うんです。会社勤務の上での形式的な付き合いではなく、本当に尊敬できる職人さんたちと取引先という枠を超えて仲良くできる事はとても嬉しい事ですね。
そんな職人さんたちと出会って感じた事は、会社は急成長する事よりも長く続ける事が大切であり、難しいという事です。例えば短期間で作られた醤油と丁寧に天然醸造した醤油を比べると、やっぱり前者の方が悪くなるのが早いんです。それと同じように急成長よりも長く続けられる組織作りが大切だと思います。「伝統デザイン工房」という会社についても、長く愛される会社として継続をしていきたいと考えております。
夢はまさに地域を盛り上げる為の組織作りそのものですね。それって凄くワクワクする事だと思うんです。そもそもキーエンスを辞めた最後の理由も「合同学園祭を開催したときのようなワクワクを持って仕事をしたいから。」というものでした。そういった仕事をする為には会社設立しかないと思ったんです。
僕たちの学生時代とは情報量や環境が全く違うので、起業に関する情報や考え方もかなり異なると思います。ただ長い歴史の中で続いている心理や本質的な部分は変わっていないはずなんです。ですからそういったものを大切にして下さい。自分の中で大切にしたいものを明確にする事で良い起業家になれると思います。起業にはとにかく気持ちが大切です!