伝統産業を守り、長く愛される会社をつくる
株式会社 伝統デザイン工房設立 / 高橋 万太郎
今回インタビューをさせて頂いたのは、株式会社伝統デザイン工房の高橋万太郎社長。
高橋社長は精密機器メーカー大手、キーエンスのご出身。
キーエンス時代は営業マンとして活躍された後、伝統産業という全く異なるフィールドで起業を決意。
全国各地の老舗醸造のお醤油を紹介するwebサイト、職人醤油.comを運営されています。
「ビジネスは信頼関係が大切。」と語る高橋社長に、取材をさせて頂きました!
小さな学生団体に参加し主に京都府内の大学の合同学園祭開催を行いました。そのときの思い出は語り尽くせない程ですね。2年間在籍しており2回の開催に携わりました。府内の大学生が100人程集まって実行委員会を結成し、当日は1500人程の学生が参加して、来場者は2万人を超える規模でした。現在も「京都学生祭典」として毎年開催しています。卒業後はリクルートと迷った結果、精密機器会社大手のキーエンスに入社します。
とても幸運な事に顕微鏡事業部という当時のトップ営業マンのグループに配属されたんです。営業の基礎の基礎を、先輩から教えて頂いた事は僕にとって本当に大きかったですね。それは「お客様と営業マンは対等である事」でした。その為にこちらは知識とコミュニケーション能力を身に付けなければならない事を学びました。
「振り返りをする事」です。営業は売れなかった場合は誰でも反省や振り返りをするんですが、売れた場合はほとんどしないんです。だから売れたときでもその1つの商談で3つの視点から振り返るように教えられました。
その3つは「自身の主観的な視点」「お客様の自身への視点」「第三者としての視点」です。自分がされて嬉しい営業と自分の営業スタイルって必ずしも同じではないと思うんですよ。例えば服を買うときなどに店員さんにやたらと下手に出られたら嫌じゃないですか?でも自分が営業をするときはお客様に対して下手に出てしまう事があると思います。そのギャップを埋める為にお客様と対等な立場である事を意識する必要があり、その為に知識とコミュニケーション能力は必須なんです。
それを教えてくれた先輩とは丁度オフィスの席が横だったので、先輩の電話の内容等で参考になる点は全部エクセルに打ち込んでキーエンス時代のお守りにしていました。キーエンスでの営業経験を通じて、営業にとって大切なのは気合でも話術でもなく「お客様との信頼」という事を学びました。
もう全てだと思うんです。新卒で入社してきた状態ってまっさらなので最初に染まる色が全てのベースになるんです。僕自身も考えの基準はキーエンスに由来しているんですよ。僕は今の事業で醤油を扱っているんですが、起業時はまず醤油屋さんを30軒回ろうと思ったんです。もし前職がコンサルタントだとしたら、市場分析から入っていたと思います。30軒回って現場を知ろうと考えたのは間違いなくキーエンスに所属していた事に由来しているんですね。
元々起業への意識は持っていましたが、2003年に大学を卒業した時期はベンチャーブームで誰しもが起業を意識していたんです。それと同じレベルで「独立できたらいいな」という程度でした。ただキーエンス入社の際に社会人の先輩から「意思の上にも三年という諺があるけど、なかなかあれは的を獲ていると思うよ・・・だから、3年は絶対に辞めるな」という事を言われた事もあって、『3年経ったらもう一度考え直してみよう』と決めました。
そして3年経った頃に今一度考えてみて「いっちょやってみるか」と思いを固め、会社を辞めて起業をしました。事業内容等は全くノープランでしたが、その時から地域産業や伝統産業に携わりたいという思いはありましたね。
何とかなるという根拠のない自信はありましたね(笑)。それとそこそこの貯金をしていたので、2年間は全く無収入でも生活できる準備をしておいたんです。だから2年間やってみてダメだったら戻ればいいやと思っていました。そうなるととても気が楽になり、あまり不安には感じていなかったですね。
営業の力がなくて困っている業界をリストアップしていたとき、目に止まったのが伝統産業や地域産業でした。目に止まったのも、オシャレなパスタ屋さんに行くよりも老舗の蕎麦屋さんに行きたいといったような本当に単純な理由だったと思います。