徳は個ならず必ず隣あり
株式会社大地を守る会 / 藤田和芳
その当時は、ソーシャルビジネスという言葉は、ありませんでした。振り返ってみると、私のしていたことがソーシャルビジネスだったということですね。自分の無意識のうちにあった物が、最近の言葉でいうとソーシャルビジネスですね。私は、農薬の問題は、政府に言っても変わらないと思いました。何故かというと、農家の人が自ら農薬を使っていたからです。政府の指示ではないので、政府では止めようがないと思いました。農家の人に言っても、野菜が売れなければ、自分の家族を養えなくなるので、農薬を使いますよね。 我々が考えたのは、その野菜を買えば良いということです。曲がった野菜でも良いから、安全な物を食べたいという人はいるはずなんです。そうすれば、ビジネスでも解決できるんです。当時はやっていた、デモなんかには頼らずにね。問題に対して、デモや運動ではなく、ビジネスとして取り組もうと思ったから、それがソーシャルビジネスに繋がったということですね。
自分の会社を作るだけでも、社会貢献だと思います。社会的責任を背負うからです。ソーシャルビジネスは、その上に志、理念、理想が必要ですね。会社を経営するなら、裕福になる為だけに経営しても良いかもしれません。でも、ソーシャルビジネスをする人は、人間としての志が必要になる。理想を追い続けることが、必要ですね。
人間の欲望と自然の摂理のアンバランスですね。私たちの仕事は、農産物を扱っています。自然を相手にしているということです。ある野菜が寒さで数が少なくなると、消費者は文句を言います。突然、暖かくなり大量に商品ができる可能性もあります。需要と供給のアンバランスの中で、ビジネスをしているんです。生産者を増やせば供給が多くなってしまい、減らせば需要に対応できなくなるのでね。知恵を働かせる楽しさもありますね。本来、トマトは夏場のものですが、冬になっても、トマトを食べたいと考えているんですよ。私たちは、自然を受け入れてほしいと、消費者に伝えていますね。